bsr
無銘
(2010/10/15)
(夢小説)
「元就サンの下で、それで満足なの」
少女が何気無しに呟いた一言で、その場は凍りついたように静かになった。本人は、興味本意に聞いただけだった。毛利軍の兵は、少女には高い関心の的だった。
「我らは毛利軍、それだけです」
そこにいるのが、何やら気まずくなっていた。
詭計智将には、たしかなカリスマ性があるのだろうか。姫武将の彼女は現在、毛利軍にいる。その経緯は、もはや本人ですら覚えていなかった。
「かような場所で何をしておる」
「元就サン」
「生意気な娘よ」
最初は輪刀で切られそうな雰囲気であったが、今ではこんなにも親しげに話せる。慣れとは恐ろしいものだ、しみじみ思う。
「家臣のみんなは、自分は毛利軍、て言うの」
「やつらは我が駒、それだけよ」
「私も、かな」
「我がわざわざ言うことでもなかろう」
それは、肯定の意味ととってしまうべきなのかな。
(慕いたいな、慕われたいな)
(うまくいかなさすぎるよ)
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