無双
もしもお船がいたら
(2010/03/30)
(せんむそ.兼続)
「直進しかしないお前様も、わたくし、嫌いではありませんよ」
口だけが笑っている。兼続には、お船と綾御前が、重なって見えた。どうか、気のせいであってほしい。寒気はきっと、気のせいだ。
「ただ、少し……うるさいのですよ、うふふ」
ドスっ!
そう、きっと、気のせい。
顔が畳に押し付けられているような、頭が足蹴にされているような、体勢がきついような――
すべて気のせいだ。愛染明王がみせている幻なのだ。そう信じたい。
「気のせいではありませんよ、お前様」
だから、目が、怖いぞ、船――とは、言えなかった。兼続は冷や汗が流れるのを感じた。
このあと、どうしよう。
「義、……愛の、試練だ、耐えろ、兼続……!」
ゴキっ、と危険な音が、直江の屋敷に響いた。
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私だけが楽しい……! もはや、悔いはない! 兼続は、好きだぞ。
最後の台詞は、兼続。
だって、仙桃院とお船は仲良し。
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