無双
物語が告げたのは残酷な最後
(2010/10/07)
(せんむそ)
「父上は、どうして、わらわの言いたいことがわかるのじゃ」
「当たり前でしょう、貴女は私の娘なのですから」
少女には、父の言葉が、まだわからなかった。おもわれているのだと、まだ理解できなかった。
少女は父のもとを離れた。世の中を見た。箱の外は、美しいと知った。それが普通のことだと、少女は知らなかった。
少女は人と出会った。絆を結んだ。友というものを知った。暖かいのだな。それが幸せなのだと、少女は知らなかった。
少女は父を失った。やり場のない絶望を知った。どうするべきか、少女はわからなかった。
少女は愛すべき人を得た。幸せを、幸せだと感じることを知った。これから先を、少女はまだ予想できなかった。
少女は苦しみを覚えた。誰かに会いたいと感じるようになった。願えば会えるのだと、少女は疑っていなかった。
少女は願うだけでは駄目だと気づいた。再び外へ出ると決めた。少女は戦うことを知ろうとしていた。
「やはりな、世は不思議で美しいのじゃ」
「美しいのに、」
「美しかったのに、」
少女は戦った。少女自身のために、愛した人のために。それが世の常と、少女は考えてしまった。
歩き出した少女を待ち構えていたのは、美しくもなんともない、ただの燃える鳥籠だった。
「貴女に、幸せになってもらいたかった」
「わらわは、もう十分じゃ、もう十分じゃ」
少女は最後に悲しみを覚えようとしていた。
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妄葬
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