一次創作
小田原における淀殿

(2010/09/23)



その日の淀殿は機嫌がよろしくなかった。
そのとき、豊臣秀吉は小田原攻めの最中だった。北条氏の立てこもる小田原城を二重に包囲し、退路を塞いでいるらしい。
しばらく秀吉と会うこともなかろうと考えていた矢先、淀殿はお寧に聞かされた。
「秀吉様は淀殿を呼んでおいでだ」
そうして、今、淀殿は駕籠に揺られている。行き先は、言わずもがな、小田原だ。
「お寧殿は悲しんでおられるぞ、殿下は何を考えておられるのだ」
戦場にわざわざ室を招くなど、頓狂なことだった。しかも、秀吉は、家臣などにも、妻を呼ぶように伝えているという。
「それだけ、血の流れることもなく、よき戦ということでありましょう」
侍女の言葉に、淀殿は顔をしかめた。
戦によきものなどあるものか。



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