一次創作
君をそっと抱きしめ、俺も安っぽい感情の無い愛を囁いた

(2010/09/20)

(死ねた)



忍びがほしいのは、ただひとつ、情報だった。房術もその術に過ぎない。
一組の布団に、全裸の女が寝ていた。そこから抜け出した男は、身なりを整え、武器を確認した。侍、と称した。武器を持っていることに、不信感はなかった。早くこの場所から出たかった。
不意に、腰に女のか細い腕がまわされた。柔らかい肌の感触、まだ服を来ていないようだ。その長い黒髪が、濡れていた。
「言ってしまわれるのですか」
寂しゅうござります、と女の力が強まる。厄介だった。腕を掴み、はずす。向き合うように体を反転させると、視線を合わせて、専用の笑顔を作った。それだけで、女が嬉しそうに笑うのだ。
「また来てくださりますか」
返事はしない、ただ笑ってやった。すると女が顔を歪め始めるから、互いに顔が見えないように抱き締めるの。女も再度腕をまわす。
「あぁ、愛しておりまする」
そうかそうか、愛してもらったのか。それまでだった。
男は、脇差しで女の心を突いた。女は哭く、声にならない声で、なんで、と。用はもうないからだった。罪悪感も後悔も、何もなかった。早く死んでくれ、と思っていた。
「愛して、た、のかな……」
それでも、どうでもいいか。
女の死体が見つかる頃、男はすでにいなかった。

愛した男の胸の中で死んだのだ、幸せだろう、姫御料人。




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詭弁



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