無双
マフラー

(2010/06/17)

(くのいち)





幸村様と一緒に戦場に出る――
その想いだけが脳を支配していた。
屋敷の片隅で、くのいちと呼ばれる少女は、ひたすらに編み物をしていた。うまくできているといいな。
あみあみ……
完成したマフラーは、我ながら上出来で、満足のいく仕上がりだった。思わず小さな幸せを胸一杯に感じた。しばしマフラーを抱き締めていると、後ろから声を掛けられた。


「何をしておるのだ」


ばっと振り向く。すぐ近くに、幸村の顔があった。さわやかな雰囲気の、少女のご主人様だ。少女よりずっと背の高い彼は、膝をおって、彼女の後ろから除き込むように手元を見ていた。
思わず赤らみそうになった。しかし、そこは持ち前の性格で立ち回る。
にゃはは、秘密です――


「それは……」


幸村の観点は、少女の腕のなか、明るい色をこぼすマフラーに向いていた。誤魔化せない。そもそも、何を隠したかったのか、わからなくなってきた。


「幸村様、これはですね……」
「柄が、私とお揃いだな」


少女の言葉を遮って、にこっと、幸村が笑った。胸がきゅんと鳴った(気がした)。
えぇ、お揃い、ですよ、幸村様!
にゃはー、といつも通りといった様子で、少女も笑ってみせた。
そのあと、髪を軽く結った少女の頭をかき撫でて、幸村はそっと出ていった。大方、お館様のところであろう。
足音が消えてから、少女はマフラーを巻いてみた。


「……元気出た」


いっちょ、頑張りますか。
くのいちは、本日も仕事に勤しみます。





-----------------

設定資料集見てから、ずっと書きたかったねた。

くのいちの夢落ちか何か。
幸村は、たぶん、くのいちのそんな健気さに気づかないから。くのいちもそれを承知でやってると思う。
以上、本編は、誰かの妄想。




|

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -