bsr
君の残像に溺れて融解

(2010/03/16)

(伊真)



()




どうやら彼は依存してしまったらしい。何に、というと、あの赤い武士である。
従者は何も言わずに、ただただ、目を背けていた。自分には、何も言えません、と背中が語っていた。ただ、国のことに私情を挟むのはやめてください、と言った。


「あぁ、悪いな、小十郎」


最悪、それ、やらかすかもな――とは、口が避けても言えるわけがない。彼も、国を納める者として、意識を忘れたりはしない。当たり前である。当たり前ではあるが、まぁ、しようがない、と言ってしまいたくなるのが、人間だ。
涼しげな屋敷に、目には見えないが、熱い気が漂っていそうな、そんな雰囲気だ。従者は、見えるような、錯覚さえ感じた。
遠くから彼を見ていた家臣たちは、筆頭が何やら嬉しそうな顔をしているぞ、と興味を惹かれた。隣の従者の疲れきったような顔は、あえて気にしなかった。
彼は頭の中で、赤い人を思い描いた。まず会って、刃を交えて、十分に楽しんで、それから……
彼の笑みが、いつの間にか、妖しいものへと変わっていった。従者は、畑に行ってきます、と逃げた。





---------------
title by 水葬
長い文章が書けない。部分的にしか書かない。



|

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -