一次創作
奴隷同然の存在だというのにさ

(2010/06/11)

(創作.治部と初芽)





(どうして貴方は、私に愛をくださるのですか?)


誰が呼んだかは知らないが、初芽局、彼女はそう名乗る。忍びの者にしては、立派な名前である。それは表向きの彼女の仕事が、奥女中であるから、かもしれない。
そんな彼女の人生の転機、それが治部との出会いであった。
初芽は奥女中であり、殿のくの一でもあった。殿の命を受けて、治部を暗殺しにいった。しかし、それは失敗に終わった。
クナイを首に押し当てようとして、しかし治部はこう言った。ぬけぬけと、初芽にこう言った。美しいな、と。


「俺は、女に興味を持ったことが、あまりない」
「だがな、うた(皎月院)と蓮、二人のことは、たしかに愛しているよ」
「蓮はな、何かな、共感しうるところがあったな」


蓮、と治部のくれた名を、初芽は愛しく思った。
そのまま治部の侍女となり、初芽はいつもを過ごしていた。裏切り者として生きていくのは、ずっと怖い。それでも構わない。やはり、ここを、居場所にしたい。


「三成さま、戦場には私もお連れください」


きっと役に立ってみせるから。


「忍びとしての生も、捨てきれぬというか」
「はい」
「構わない。ただな、」


死ぬなよ――
もちろん、死ぬはずがない。せっかく見つけた場所を、やすやすと逃したくない。
奴隷でも何でもいい、ここで生きていたい――





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偽花

ぼつだ、ぼつ! ツマンネ、だよ、もう!




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