無双
埋葬された正直者たち

(2010/05/31)

(ねねと清正.三成)





「言っただろう、この世界はあの子にとっては生きにくいって」
「……知っていました」


静かな声で、北政所が言った。正面に座った主計頭は、無表情で、無機質な返事をした。
一昨日、治部少輸が斬首された。
東西にわかれた治部と主計は敵同士となっていた。かといって、互いを嫌っているわけではなかった(と主計は思っている)。しかし、助命を願うとか、そういうことはしなかった。しようともしなかった。願い出たところで、話を聞き入れられたかどうかは、言うまでもない。
久しぶりに顔を会わせた、北政所と主計頭。治部の話をして、北政所は、静かに涙を流した。


「あの子は、いずれ、こうなるだろうって、わかっていたよ」


それでも、悲しい。北政所にとって、治部は、我が子も同然だった。治部だけではない。主計もまた我が子であり、豊家のものは、みな家族であった。


「……おねね様」
「……っ!」


主計が北政所をまっすぐに見据える。
北政所は堪えていた糸が切れた。拳を握り、叫んだ。悲痛な叫びを、主計は聞いていることしかできなかった。
――どうしてあの子が、こんな目にあうしかなかったの!?
――他に方法はなかったの!?
主計は、ときどき、不安になることがある。ほんとうにこの道を選んで、よかったのだろうか、と――
正解はないし、どれが最良なのかを知る者もいない。ただ言えるのは、みな、こう考えていたということだ。

家を守りたかっただけなのに――





------------------



司馬遼太郎さんの「豊臣家の人々」。これによれば、豊家は秀吉によって栄え、秀吉によって滅びた。
まぁ、確かにそうだよねぇ……。

加藤清正については、詳しくないので、間違いありまくりです。おねね様についてもね。
ほぼフィーリングで書きました。表記に関しては無視してください。
後ほど修正したいと思います。




|

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -