無双
くのいちと甲斐姫;ある日の大阪城にて

(2010/05/28)


いない、いない、どこにいるの?
よく晴れた日の大阪、そこを小柄な少女が駆け回っていた。
いない、いない、――


「何してんの?」


そんな彼女の前に、派手な装束の甲斐姫が立ちふさがった。わざとだ。やむを得ず、少女――もとい、くのいちが立ち止まった。棚引いていた衣がふわりと落ちる。


「探し物?」
「……幸村様がいない」
「幸村様?」


くのいちは幸村の忍びである。大事な主人の姿が見えなければ、当然不安にもなる。声はいつもと違って弱々しかった。
誰にも言えない趣向がある。甲斐姫は、くのいちのこんな姿を見るのが、好きだった。けっして嗜虐趣味があるわけではない。ただくのいちの飾らない一面を見ているような気がするのだ。素直な彼女を垣間見れる気がするのだ。


「幸村様なら、あの人たちと出ていったよ」
「あの人たち?」
「そ、あの人たち」


甲斐姫が向こう側を指差した。その方向には、幸村とも親しい男の屋敷がある。今頃は、気安い友同士で会話に花を咲かせているのだろう。
理解して、くのいちはへなへなと座り込んだ。緊張が解けたらしい。その隣に、甲斐姫も腰を下ろした。


「あんたも大変だね」
「お姫さんほどじゃないよ」
「今のあたしは、けっこう自由にやってるから。別に、特別、大変じゃないの」
「そっかぁ。意外と、幸村様と、似てるかもね」
「嘘でしょ」
「さあ、どうだろうね」


できれば比べないでほしいなぁ――
ちょっぴり複雑な気持ちで、甲斐姫は黙ってごちた。




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せんむそ3を早くやりたいな。



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