一次創作
シュガー・オーガストと絵本の世界

(2010/05/19)



「稀代の魔術師」と呼ばれる、緑の髪の女性がいました。魔術師といえば、黒衣に身を包む者を思い浮かべるのでしょう。しかし彼女は、明るい色をした、派手なドレスを着ていました。まるでビスクドールのような女性でした。可愛らしさとは一変、氷のような冷たさも秘めていました。
彼女の名前は、シュガー・オーガストといいます。
羽根ペンを握る魔術師シュガーは、机上の本に、何かをかいていました。本は真っ白です。そこに、易しい文字の言葉と、柔らかなタッチの絵が加わっていきます。これは、絵本でした。魔術師シュガーの紡ぎ出す、甘くて残酷な物語の、不思議な絵本でした。

絵本の中では、シュガーの作り出した世界で、産み出された登場人物が、何も知らずに生活をしています。すべて操られていることを知らずに、平和な世界を築こうとしています。女神アイリィを平和の象徴として、人々はそれぞれの国に暮らしています。
世界の名前は、新世界・アインシュタッド。女神アイリィが再生した世界。平和を為すために、二度目の創造を終えた世界です。それ以前の世界を、人々は旧世界と呼びます。
女神アイリィは希望を司る神とされています。世界を一新することで平和という希望をもたらし、人々に活力を与えたそうです。彼女は神話の登場人物です。しかし、実在する神でもあります。
アインシュタッドには、キセキと呼ばれる宝石が散りばめられています。キセキは意思を持ち、まるで精霊のようなものです。若い少年少女たちのみ、まれにキセキと意思の疎通を謀ることができます。そうして彼らはキセキと契約を交わし、人智を越えた力を手にします。その力でアインシュタッドの裏世界に住まう妖魔から、世界を護る為に戦います。戦う子供たちは、「アイリィの騎士」とも、「世界の寵童」とも呼ばれました。
魔術師シュガーにより、主人公に選ばれた少年、イナリもキセキの契約者でした。





「さぁ、私を楽しませておくれ」


世界の礎を精製し、魔術師シュガーの準備が終わりました。彼女の享楽の為だけに、絵本のなかでは、美しく哀しい物語が始まっていきました。
自分たちの正体を知らずに、イナリたちは聖戦と称された戦いに巻き込まれていくのです。平和が崩壊し、女神が傷つき、人が死んでゆく。残酷な世界は、まるで魔術師シュガーの心を移したようでした。




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昔書いた小説(今は削除済み)のねたをリメイク。あれはイナリを主人公のお話。これはシュガーが主人公のお話。

メインから下ろしました。




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