無双
幾日かあとの喜劇に期待

(2012/07/27)

幸くの



不覚、と短く喘いで倒れた幸村を守って逃げたのが二日前のことだ。手持ちの布や薬でできる治療をして、くのいちは額に汗が浮かんだ。味方とも離れてしまった今、くのいちに幸村を運んで戦線を脱することができなかった。ひとまず的に見つかりにくい奥地で、幸村の回復を待つしかなかった。今、幸村を置いて見方を呼びにいくなど、くのいちにはできなかった。
はやく、めをさまして。
幸村の傍らで、くのいちは彼の目覚めを待ち望んだ。彼の汗を拭いながら、緊張の汗がとまらなかった。幸村ほどの重症ではなくても、くのいちも傷を負っていた。それでも彼女はくないを握り、常に敵の気配に注意していた。忍びなのだから、なんてことはない。これが役目なのだから。
もしも、と次第にくのいちの気も、沈んでいった。もしも、幸村が、まだ目覚めなかったら、ここに身を潜めていることがばれてしまったら、どうしよう。弱気になってはいけない、とくのいちは自身を鼓舞する。それ以前に忍びだ。ただ無心に、不乱に、やることをやるんだ。

目を見開いて、くないを握って、傍らで構えているくのいちに幸村が気づいたとき、彼女は何も話せず、顔も合わせなかった。




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