一次創作
poor flower

(2012/02/09)


聖女シリーズ




私に名はありません。聖なる森の片隅に咲く、一輪の花です。薔薇のように高貴なわけでもなく、百合のように上品なわけでもなく、ましてや菫のように愛らしいわけでもないのです。雑草に見られてしまうかもしれない、色のない小さな花なのです。そんな私は、天使の方にも、妖精の方にも、見向きもされませんでした。
ところがどうしたことでしょう、一人だけ、私に語りかけてくださった方がいたのです。
「まぁ、見かけによらず、たくましい花なのね」
金糸の髪にワンピースの、淑やかなお方です。この方こそ、聖女のリヴィエール様なのでした。御神に愛された存在、聖女様、お会いするのは初めてでした。恐れ多い、と私は花を閉じかけました。
「また会いに来てもいいかな。私、あなたとお喋りをしたいわ」
何てことでしょう! 聖女リヴィエール様は、お優しい方なのだ、と私は思いました。
それから、リヴィエール様は私のもとへ来てくださいました。騎士様とご一緒であるときは、姫様はよく騎士様をからかっておいででした。いつの間にか私は、リヴィエール様、騎士様と親しくなっていたのです。

それが、私の不幸だったのだ、と三常侍様に言われました。

「あなた、リヴィエールと仲良しなの?」

ただの花でしかない私には、抵抗する術はありませんでした。



見るも無惨な花を見つけたリヴィエールは、ふと目を背けて、そのまま立ち去った。




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