無双
白々しく泣いてる暁の星々

(2012/01/15)



いかなる英雄も、最期は呆気ないものなのだ。神技で敵軍を苦しめた猛将も、病には勝てなかった。死とは、不可侵な事象、どうすることもできない事柄だ。
司馬昭自身、他人の生死に目を向けずにやり過ごしてきた。変えられない現実に、一喜一憂できない。面倒だ、面倒なことはごめんだ。

後悔は、許されない。後悔は自分の行いに責任を持っていないからするのだ。王元姫に諭されて、司馬昭は頭を抱えていた。後悔しても、もう遅い。目を閉じて動かない彼が、そう語りかけていた。
「子上殿のせい、あなたが適当に指示したから、こうなってしまったのよ」
王元姫の言っていることはもっともだった。誰も司馬昭に苦言しない、一兵卒の死に目を向けたりしない。彼女だけが司馬昭を責めた。
「何も思わないの?」
面倒だから、逃げてしまってもいいのか。司馬昭は何も言えなかった。目の前の無様な死体は、司馬昭の犠牲者だった。きりきりと、体が痛んだ。

「さすがに、言い過ぎてしまったかもしれません」
「元姫、気に病むな」
以来、司馬昭は浮かない顔で、にか出てこない。王元姫の申し訳なさそうな顔つきに、司馬師は笑いかけた。
「その程度のことで気落ちする、やつに問題があるのだ」

浅い眠りに目を覚ます。あわい夜色に、司馬昭は目を細めた。嫌な朝だ、今日も面倒な朝だ。苛立ちをぶつけるものもないのだ。






薄声




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