無双
かえれない

(2012/01/09)

甘凌~呂陸





 ――もう、うんざりだ。
いつものように喧嘩して、いつものように最後に笑うつもりだった。凌統が、疲れた、と呟いて、テーブルの上に置いたままの荷物を取った。
「短い間だったけど、それなりに楽しくなかったよ。じゃあね」
感情のない口調と目で、凌統は甘寧に言った。荷物を持った凌統がドアを閉めるのを、甘寧は呆然と見ていた。
終わってしまった。そう思った。もやもやと、苛立ちが募る。それをセーブできず、甘寧は床に拳を叩きつけた。

呂蒙の家に上がり込むと、そこには陸遜がいて、邪魔をしてしまったかと思った。申し訳なさそうに凌統が踏み入れると、彼らは優しく歓迎してくれた。
「ごめん、陸遜」
「謝らないでください。大切な凌統殿が困っていらっしゃるのですから」
部屋には酒の代わりにカフェラテと、菓子類が用意されていた。これはきっと陸遜の好みなのだろう。彼はまだ飲酒できないから、呂蒙が気を利かせたのだ。
二人に促されるように座り、まだ温かいカフェラテを飲む。あまりにも優しくて、凌統はいたたまれなくなった。
「……甘寧とは、会っていないのか」
遠慮がちに聞いてくる呂蒙に、凌統は首を振った。心配かけまいと笑おうとしたが、それはうまくいかなかった。
「あいつなんか、もともと嫌いなんですよ」
馬鹿だし、煩いし、自分勝手だし。
次から次へと甘寧の顔が浮かんできて、不覚にも涙ぐんでしまった。しかし、それを二人には見せられない。凌統は必死に堪え、そっぽを向いた。
「凌統殿は、甘寧殿のことを愛されていますね」
らしくなく、顔が赤くなるのを感じた。否定したい、でも今振り向けば、さらに情けない顔をさらしそうだった。
好きだ、甘寧、でも大嫌いだ。凌統はカフェラテを飲み干した。




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