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虚しさと共に佇む残党

(2012/01/04)

日本



あぁ、そうですか、と日本はその場に座り込んだ。気が抜けていく、体に力が入らなくなる。安心したような、哀しいような、そういう複雑な気持ちだった。日本、日本、と弱々しく呼ぶ声が聞こえてくる。はい、今、行きますから。日本はしばらくそこから動けなかった。

「あんちゃん、お蕎麦はいらんかえ? まぁ、蕎麦粉はないんだがや」
「お気遣い、ありがとうございます。けれど、大丈夫です。皆さんでお食べください」
「そうかえ。無理はせんとな」
気丈な女性の店の前を、日本はとぼとぼ歩いていった。こうして歩いていると、気持ちがいくらか楽になるのだ。しかし、同時に、責任や誇りと格闘し始める。考え事ではち切れそうになる。そんな彼を、「あの人」は知っているのだろうか。目の前を、赤子を抱えた女性が通った。
「あ、あの……」
「はい、私ですか。どうしましたか」
「今、どういうことを、思っていらっしゃいますか」
何を聞いているのだろう、と日本は自分に問いかけた。女性からすれば、急なことで、困ってしまうに違いない。言ってから慌て出す日本に、女性は慎ましげに、くすりと笑った。
「とても、わかりませんよ。でも、清々としています」
あぁ、この人は強いな、と日本は目を閉じた。







告別




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