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ひねもす雨音聴き入る廃人
(2011/12/08)
蘭日
降り止まない雨に嫌気が差すわけでもなく、日本をそれをBGMに本を読んでいた。屋根から雨粒が滴り落ち、庭に小さな水溜まりを作る。ぽつぽつ、ちゃぽん。定まらないリズムで、自然に鳴らされる音楽は、げにおもしろかった。
はらりとページをめくり、無言で本を読み進める。本当に、閑かな時間だった。
そこにひとつふたつと、違う音が鳴った。本にしおりを挟んで、日本は立ち上がった。
ぴちゃり、と足音が止まった。
ガラガラと玄関が開く。無用心なのではなく、事前に鍵を開けたからだ。
「こんにちは、オランダさん」
言うと同時に、タオルを差し出す。折り畳んだビニール傘と髪から水を滴らすオランダは、用意の良さを訝しく思いながら、黙ってタオルを受け取った。
水も滴るいい男、とふと日本はオランダを見た。彼に関して言えば、雨天より晴天の方が似合うだろう。羨ましいとは思わない。ただ、もやもやとした思いがないわけでもない。日本は雨のなか、じっと時を浪費することを、早くと待っていることもある。
客間ではなく、居間へ。先程まで読んでいた本を寄せて、オランダに座布団を出した。
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Guilty
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