一次創作
備前中納言関ヶ原の役

(2011/09/17)

関ヶ原の戦い ぼつ





まだ若きその中納言は、亡き太閤殿下の養子であった。宇喜多家を相続した彼は五大老の一人であり、豊臣への忠誠は固いものだった。
妻であった豪に別れを告げ、宇喜多秀家は関ヶ原の地、天満山に陣を構えた。そのときはまだ、この大戦がいとも簡単に終わってしまうとは考えてもいなかった。勝てる、と信じていた。勝たねばならぬ、と思っていた。松尾山に布陣していた小早川秀秋が東軍に寝返り、西軍は総崩れとなる。秀秋は秀家と同じく、もとは太閤の養子だった。その彼が裏切った。当然と言えば、当然の行動だった。大谷刑部は秀秋の裏切りを予想し、その上で布陣した。しかし秀家は、大谷刑部のように聡い武将ではなかった。秀秋に激しく憤りを感じた。
結局、秀家も敗走せざるをえなかった。

姿を見たとたんに、待ちきれないと、豪は秀家に抱きついた。そのか細い腕が背に回され、秀家は生きている、と思った。しかし、秀家はあくまで敗残の将で、追われている身だった。
「これが、最後の会瀬じゃ」
「秀家様、豪は、秀家様と共にいとうございます」
「……許せ、豪」
その晩は、甘く幸せで、とても悲しいものだった。さらば、愛しい人よ。
秀家は島津家に匿われ、その後、徳川方に明け渡され、八丈島へと流された。それからの秀家の生活は、貧しく、穏やかで、ひどく寂しいものだ。島の者に助けられながら、数人の家来と、静かに生を終えた。
関ヶ原の役で夫と別れた豪姫は、実家前田家で、遺児とともに暮らし、死ぬときまで秀家を想い続けた。
天下分け目の戦の裏には、武将同士の絆はもちろん、夫婦の物悲しい事実もあるのだった。





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シリーズ?のコンセプトからずれたため。



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