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気負ったって仕方がないから

(2011/08/31)

日本と枢軸




「端から期待はしていません。私は私で、戦わせていただきます」
彼にしては珍しい発言だと皆が思った。はっきりと、日本は言った。仲間にも、つらい発言を言った。孤独の戦いへ身を投じると言った。誰もが彼を心配した。その発言は、珍しい発言であれど、彼らしくもあった。彼は中途半端に意思を曲げないのだ、と誰もが思い知らされた。
イタリアが連合国に加担し、ルーマニアやハンガリーが抗戦をやめ、ドイツが降伏する。それでも日本はまだ戦っていた。

それから半世紀以上が経って、かつての悲惨さを語り継ぐようになった。もう二度と、あのようなことが起こってはいけないのだ、と口々に言う。
「忘れていいよ」
と誰かが言った。肩に手を置かれて、日本は力んでいたことに気がついた。すっと手のひらに吸い込まれるように、力が抜けた。
「もっと楽にしていいんだよ」
「十分、楽にしていますよ」
「嘘つき」
少しだけ悲しそうな顔をされて、日本は戸惑っていた。嘘を言ったつもりはない、本当だ。私はやりたいように生きている、それで幸せだ。これ以上は望んでいない。ただ過去は消せないから、それを背負って生きていく。それが日本の選択だから。
「それが重荷にならないように、私たちが、助けたい」
「あなたは……、」
日本の疑問は、弾けとんだ。

うたた寝してしまったようで、日本はドイツに起こされた。隣ではイタリアがまだ眠りの最中だ。
「疲れていたのだろう、起こすのも悪いとは思ったのだが……」
「いえ、お気になさらず。起こしてくださり、ありがとうございます」
「例を言われるようなことはしていない。ただ、日本、どうかしたのか」
「どう、とは?」
ドイツが自分の目を指で示した。日本が目に手を運ぶと、そこは濡れていた。あ、と声を出してしまった。
「申し訳ありません」
「日本は忙しいな、その礼儀正しさは美点ではあるが。いい顔だ、夢の中で悩みでも解決したか」
「……そうですね」
ハンカチで涙を拭いながら、日本ははにかんで笑ってみせた。





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だから、自衛隊も少しおとなしくなろうぜ、地元の戦闘機が本気でうるさいんだぜ、受験生の敵なんだぜ、ここらへんロクな受験生いないけど、という話。




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