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想うだけだけの恋があったっていいじゃない

(2011/08/21)

丁→典芬リベンジ





人魚姫は最後、叶わぬ恋のために、海の泡となってしまうのです。
デンマークは懐かしい童話を読んで、苦々しい顔をした。デンマークは人魚姫でないから、溶けることはない。しかし、もやもやとした気分になった。そばで手芸をしていたノルウェーが、手を休めて言った。
「あんこ、きもい」
「そうけ」
「……おぅ」
覇気がない。これは実につまらない。ノルウェーはトロールに小さな声で耳打ちした。曰く、後であんこのコーヒーに「とあるもの」を入れておけ、と。ノルウェーさん、そりゃあ、いじめだよ。
「ぎりぎりまでばれねぇようにすっがら問題ねーべ」
「ノーレ、誰と喋っているの」
アイスランドがツッコミをいれる。デンマークは気にした素振りも見せなかった。

よく晴れた空の下、庭では金槌の音がカンカンと響いていた。スウェーデンの日曜大工だ。いつもフィンランドのそばにいる犬が、今はスウェーデンの隣でおとなしく昼寝をしていた。
「何つくってんだっぺ」
「……ん」
後ろから覗き込んだデンマークに、スウェーデンは足元の一枚の紙を示した。設計図のようなものだった。椅子、というよりは、土台のようなものだった。シーが、とスウェーデンが呟いて、デンマークは何となく意味を察した。察して、微笑ましくなった。そして、フィンやシーランドがうらやましくなった。その優しさが、俺に向かないものか、と思ってしまった。
「スヴェーリエ、」
「……ん」
「楽しいけ?」
「……んだな」
ぷっと、スウェーデンが笑った気がした。

外にデンマークがいることに気づいたのだろう。フィンランドが三人分のコーヒーを淹れて持ってきた。一服しよう、とスウェーデンが工具を下に置いた。
「おぅ、俺の分もあるのけ」
「はい、ターさんのも、忘れてませんよ」
フィンランドの笑顔は、スウェーデンとは比べ物にならないほどわかりやすくて、愛くるしいもののようにも思える。いつでもスウェーデンの隣にいられる。妬ましさよりも、単純に憧れのようなものを感じた。
いがっぺな。しゃーないな。
スウェーデンがコーヒーで一息吐いた。もう忘れようと、デンマークはコーヒーを口に運び、――こうなった。
「ぶふぉえっ!!」
「!!?」
「おひやぁぁあ!!? ターさん!?」
飛び散った。

その突然の悲鳴という騒ぎ声を、ノルウェー、アイスランド兄弟は二階から見ていた。
「ノーレ、コーヒーに何いれたの」
「シュールストレミング、臭いはこいつがごまかした」
「ノーレ……」
北欧は今日もなんとか平和です。




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フライパンと包丁

やっぱりぼつ。
デンマークは移民・移住に対してものすごく厳しいです。日本よりも厳しいです。国際結婚も大変です。逆に、スウェーデンやノルウェーは、移民を受け入れたことによる事件も起こっている。そういうことも考えての国の方針なのかもね。




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