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糧にもならない歌

(2011/08/21)

仏摩 ぼつ





たまに聴く。最近は畑を耕してはワインを飲んでいるフランスが、たまにセーヌ川の方まで足を伸ばしては、シャンソンを歌う。流れるようにナンパに移ることは、この際は見なかったことにする。それがフランスであるのだから、仕方がない。モナコは気にしなかった。気にはなるが、諦めの方が強いのだ。
「フランス」
「今夜、どうかな。美味しいレストランを知っているんだ」
「フランス」
「どうせならみんなで行こうよ。きっと楽しいよ」
「……Frangin」
「モナコ、呼んだ!!?」
ふむ、わざとやっているのだな。モナコは兄貴分を一度殴りたくなって、思い止まった。それでは自分のキャラが危ない。後ろのスタイルのいい女性たちが去っていくので、それで相子にしよう。
「うむ、見かけたから」
「それだけ!? 俺に用があったとかではなくて!?」
「……用件か」
「あ、やっぱり、あるよね。それで、それで!」
先を急がすフランスが、モナコにからだごと迫っていた。肩を手で押し返しながら、モナコは至って静かに言った。
「歌を聴きたかったのだ」





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何文か打った地点で、ぼつ決定して打ち始めた代物

spangle




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