蜀の和気藹々
子龍と雲緑「つまるところ、」

(2010/04/18)

(蜀の和気藹々)





女性は、あくまでも、子供を為すために必要なのだ。趙雲はそう教えられたのだ。それで、わざわざ嫁をとる必要はないのだ、と考えていた。ただの軍人に過ぎないから。
それなのに――


「待ちなさい、子龍さん!」
「ごめんなさい。いくら軍師さまの命令でも、それは、聞けない……!」


宮殿のなかで、趙雲と諸葛亮のおいかけっこが繰り広げられていた。逃げる子龍、追う諸葛。


「……っ、子龍さん、実は女性免疫ないんでしょう……?」


図星だった。
これは真面目な話であり、別に、生粋の男色家、などではない。本当である。女性が苦手だとか、そういうことを言うつもりはない。ただ気恥ずかしくて仕方がないのだ。
それなのに、諸葛亮から趙雲に話されたのは、縁談、であった。


(うわ……うわあ……!)


顔を赤らめながら走り続ける趙雲。もはや、(体力の違いで)諸葛亮が後ろにいないことにも、気づいていなかった。
目撃者は、走っているから顔が赤いのだ、と思っていた。
そんな感じで、注意を怠ってしまったらしい。


「危ないって!」
「!」


とたん、衝撃が走って、趙雲はよろめいた。体勢を整えながら前を見ると、小柄な少女が尻餅をついていた。


「あ……っ」
「危ないぞ、将軍殿!」


立ち上がるやいなや、少女は趙雲に注意してきた。ずいぶんと元気な娘である。きれいな着物を纏っているところを見ると、身分はそこそこであるようだ。
一方の趙雲は、思考が半分停止していた。ただでさえ真っ赤であった顔に、さらなる熱が集まり、ろくな言葉を喋れなくなっていた。
その間も、少女は趙雲に対し、説教じみた発言を繰り返していた。聞こえてはいないのだけれど――


「そのくらいにしてやれ、雲緑」


突然現れて雲緑を宥めたのは、趙雲もよく見知った相手だった。同じく蜀漢の将、馬超である。雲緑と呼ばれた少女は、口をとがらせた。その様子は、可愛らしい。


「馬超殿、あの……」
「よぉ、趙子龍。どうだい、俺の妹は」
「妹……ですか?」


ちらりと雲緑を見る。たしかに、どこか似た雰囲気がある。彼女はふわりと笑った。


「あなたが趙子龍さまね! はじめまして、旦那さま!」


旦那さま、と呼ばれて、趙雲はわけがわからなくなった。ただ、やはり、顔は熱くなるばかりであった。





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あくまでも、女性向け萌えがテーマの、創作です。史実や、半三国志演技を参考にしていたり、背いていたりします。

我が家の子龍と雲緑の出会いは、こんな感じで。

馬雲緑(バ ウンリョク)
漢字は、しようがないから「緑」に固定。リュイ。



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