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祖国とフリッツ前章

(2011/08/17)

フリードリヒ大王とプロイセン娘(ユールヒェン)
時代イメージとしては七年戦争よりも前。フリッツが国内整えている頃あたり。あまり関係ないけれど。





壁に寄りかかって、フルートの音を聴くことが、その姿を見ていることが、今のユールヒェンの好きなことだった。彼女はいつも部屋で戦略を考えている。けれど、フルートの音が聴こえてくると、自然とここにやって来る。彼女の姿を見ると、演奏者、王は彼女に聴かせるように音色を変えた。
根っからの騎士であるユールヒェンも、わずかながら、音楽の知識があった。自ら演奏会に足を運ぶことは少ない。それでも、王のフルートには聴き入っていた。心地よい、川の流れのような音、王の奏でる音が、彼女は大好きだった。
「……ユリア」
「どうした、フリッツ」
音が止んでしまったことに名残惜しさを感じながら、ユールヒェンは王のそばに近寄った。
「お茶にしようか。立っているのも疲れただろう」
「そんなの、平気! フリッツの曲だって、もっと聴いていたいし」
「嬉しいことを言うものだ」
しかし王はフルートを放した。疲れているのは王の方だった。それに気づいて、ユールヒェンは慌てて彼を椅子に座らせた。ハンカチを取り出して、うっすらと滲む汗を拭いてやる。自分のせいで無理をさせてしまったのか、と不安になった。そんなユールヒェンを気遣って、王は彼女の頭を撫でた。いくつもの戦禍に身を投じてきた彼女も、根はやはり少女だ。それが何やら愛らしかった。
「フリッツ、髪が乱れる」
だいぶ伸びてきたユールヒェンの髪を、王は満足げに指で鋤いた。
「今、お前のための曲を作っているよ」
「私の?」
「ユールヒェンが思うままに戦えるように」
「そっか。じゃあ、楽しみにしてるな」
素直に嬉しかった。しかし戦う前に倒れられても困る。王の危なっかしさがユールヒェンは心配だった。医師を呼ぼうとした彼女を、王は止めた。大丈夫だ、という。ユールヒェンは代わりに王の背を擦っていた。
祖国に世話を焼かれることに、王は少しの優越感を感じていた。ずっと、彼女はそばにいた。それだけ信頼されている。それに答えようと思った。




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フリ普(娘)は、書きたいことがたくさんあるという話。




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