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処女作集:ヒマワリで笑顔が咲いた

(2011/05/29)

親就 現代


バス内の冷房が気持ち良かったのだ。だから気を抜いてしまった。つまり言い訳。外は30度を軽く通り越しているし、太陽は空高く昇っていた。今日はまさしく夏のも猛暑日だ。地球温暖化のせいか。きっとそのせい。昔はもっと涼しかった。気のせいではない、まぎれもない事実だ。
元親は思わずバスでゆっくりしてしまい、降りるはずの停留所を通り過ぎてしまった。反対のバスを待つのも面倒だったし、運動がてら、歩くことにした。
汗は拭いてもきりがない。背を汗が伝っていくのが分かる。これでも目一杯薄着をしてきたのに。首にタオルを巻いて、その短い銀髪をかき乱す。今日の講義は午後からで、時間には余裕がある。学校に着く前に、手前のカフェで涼むことにしよう。
いつもと違う通りは新鮮で、暑い中に一つの楽しみをくれた。このケーキ屋はなかなか美味しそうだとか、新しい情報も手に入った。
途中で目を奪われたのは、黄色い大きな夏の花。花屋の店先にヒマワリが並んでいた。ヒマワリ――漢字で書くと、向日葵。日に向かう葵。日、日輪。頭上の太陽様のこと。なんだか元就が好きそうな花だと思った。
「お兄さん、ヒマワリ欲しいんですか?」
しばらく見つめていたから、中から可愛らしいツインテールな店員さんが出てきてしまった。脳内では元就がヒマワリを嬉しそうに抱える姿が描かれていて、
結局、買ってしまった。
なんだか恥ずかしくなって、早足になって店をあとにする。花屋で花を買うなんて、初めての経験だった。

「ちょっと待て、毛利!」
「煩い、叫ばなくとも聞こえるわ」
元就を見付けたのは、講義の終了後だった。講義で不快なことでもあったのだろうか。あからさまに不機嫌丸出しの元就を、みんなが避けている。勘の良い生徒たちだ。
「これ、やるよ」
「ひ、まわり?」
ヒマワリで日輪を連想したのは正解だった。晴れていく元就の表情。普段から見られるわけでないこの表情は貴重品だ。
「喜んでもらっておくぞ、長曾我部」
花屋のツインテール美女よりも、元就のほうが断然可愛らしく映ってきた。この目はもう元就専用! 人目を気にせず抱き締めようとした元親は、元就のストレートで一発KOされた。




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