無双
たとえば運命という名の脚本があるとして

(2010/12/29)

(趙雲と馬超)



戦人の仕事は、戦って、死しても勝利を捧ぐことにある。
ここで死ぬのか、私は。
地に伏して、ぼんやりとする脳で考えた。死。戦場での死だ。武骨者の自分にはお似合いだろう。趙雲は自嘲するように口端をつり上げた。
こんなところで死ぬのか。まだやることはあるだろうに。まだ悲願を達成したとは言えない。まだまだ、君のために戦わなければいけないのに。残念だ。
残念だよ。それに、彼がいるではないか。
彼が。
趙雲は閉じかけた目を見開いた。青い空が映る。耳には、聞きなれた騎馬の音が届いた。そして、怒声。いきなり胸ぐらを掴まれた。痛いな、私は怪我人だぞ。しかも重傷だ。
「何死にかけてるんだ、馬鹿!」
趙雲はけろりと笑った。馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。彼の腕を逆に掴み、それを支えに趙雲は立ち上がった。あなたよりは利口ですよ。精一杯の皮肉は、音にはなっていなかった。もしかしたら気づいていないかもしれない。
ふらふらとよろけるが、足に力を入れて立とうとする趙雲を、彼は無理矢理担いだ。さすがは錦馬超。
そのまま陣営まで連れ帰られた。軍師には珍しい驚いたような顔をされ、愛弟子には心底心配していると言葉をかけられた。

「お前はここでくたばる武人ではないだろう」
簡易な治療を受け包帯を巻かれた趙雲は彼のもとへ。礼を言うためだ。本当はじっとしているべきなのだが、趙雲は聞かなかった。彼は趙雲の顔を見ては、その一言をぶつけてきた。
死ぬかと思った。さすがにもう駄目かと思った。それでも、彼の顔が浮かびては、また生きようと思った。

「当たり前でしょう」

趙雲、ここにあり!
それからしばらくした頃、戦場にはまた趙雲の姿があった。長坂の英雄は、槍を手に次から次へと敵兵を薙ぎ払った。恐れをなした塀が一人、また一人と逃げていく。
その後方には涼州の雄、錦馬超がいた。
「俺も出るぞ」
この日の戦は快勝だった。二人の猛者の戦いぶりは、清々しいものがあった。




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Guilty

メインにおこうかとも考えたけれど、やっぱりボツ



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