無双
どうかその笑顔が枯れないでください

(2010/12/27)

周瑜と小喬




「小喬!」
周瑜が愛する妻の名を呼んだ。答えたのは、姉の大喬だった。
「小喬なら、船の方にいると思います」
しっかり者(けっして悪い意味ではない)彼女は、今から迎えに行こうとしていたらしい。私が向かう必要はないようですね。慎ましやかに笑って、大喬は反対方向に歩いていった。きっと孫策のもとだ。周瑜も小喬のいる船着き場へと走り出した。

小さな後ろ姿を見つけた。水面に向かって、背筋を伸ばして立っていた。しゃんとしたその姿が、周瑜は好きだった。驚かせないように、音をたてて小喬の隣に立った。
「周瑜様だ」
「帰りが遅かったのでな、心配したぞ」
周瑜がそう言えば、小喬はへらっと笑って謝った。なんて可愛いのだろう。
「今ね、歌を作ってたの」
「ほう、それはぜひ聴いてみたいな」
「じゃあ、周瑜様が笛を吹いてね。私が舞って、歌ってあげる」
扇を開いて、狭い場所で、小喬は舞を披露してくれた。とにかく動き回るくせに、危なっかしさはない。
視線が交わって、周瑜は小喬に手を伸ばした。その手を、彼女は嬉しそうに握った。

実を言えば、近日中に出兵を控えていた。周瑜は指揮官であり、もちろん出陣する。しかし小喬は別だ。留守番なのだ。
「今日はみんなから桃をお裾分けしてもらったの」
「そうか、人気者だな」
「周瑜様と一緒に食べようと思って残してあるの」
「ありがとう、小喬」
小さなこの子はきっと寂しがるから、早く帰ってこられるようにしたい。そうすることもまた仕事なのだと、周瑜は手に力を入れた。



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彼女のために泣いた




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