無双
ただ熱い心臓

(2010/12/11)


陸遜と呂蒙
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とくんとくん、
心臓は静かに、鼓動していた。燃え盛る城を見つめながら、陸遜は何かを感じていた。軍師として、それは知らなければいけないものだと思う。冷静を保ちながら、一人、物思いに更けた。
「感心せんな、武器も持たずに」
危険だろうが。呂蒙の手が肩に乗る。思考は一旦停止する。
「今、いいところだったのに」
「あの火のことか」
「違いますよ」
冗談だ、と呂蒙が笑った。甘寧の粗暴な声が聞こえた。先に戻る、と。呂蒙は適当に返事をして、陸遜の隣に腰を下ろした。陸遜は座らなかった。呂蒙の戟がぐさりと地に刺さる。
「何を考えていた」
「わからないのです」
「ほぉ。また難しいことを考えていたみたいだな」
「そうなのですか?」
「たぶんな」
陸遜は頭の中で引っ掛かる言葉のいくつかを繋ぎ始めた。

火計に対する備えはなかったらしい。逃げ遅れた兵士が苦しみながら倒れていく。辛うじて脱出できた者たちは呉に降伏するだろうか、ただ逃げていくのだろうか。

やはり答えにはたどり着かなかった。終わるまで隣には呂蒙がいた。
「熱いな」
呂蒙が静かに呟いた。陸遜は相槌を打たなかった。
心臓は変わらず一定の間隔で鼓動していた。




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藍日




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