一次創作
楽都で宴を

(2010/12/05)



ぽろん、ぽろん、弦を弾けば音がなる。それは当たり前のことであるけれど、彼女がやると、なぜか特別なことのように思えた。
「お上手にございますな、いつの間に箏をお習いに?」
男が問うと、彼女はふてくされたような顔をした。しくじったかな、と男は苦笑いで頭をぽりぽり書いた。いまさら弁解はできない。
「わらわだって、舞や箏の一つや二つ、できますのよ」
すねた姫様も可愛らしいな、とのんきに考えていた。
「なら、笛も吹いてあげますわ」
「いえ、笛は私が吹きます。ですので姫様には、よろしければ、舞っていただけないでしょうか」
「……どうしてもと言うなら、やらないこともないですけれど」
立ち上がる彼女は手に剣を握った。おやおや。見せてくれるのはどうやら剣舞のようだ。姫らしくて、いいではないか。男は笛に唇をあてた。
剣の重さを感じさせない軽やかな舞だった。足運びも、表情も、美しかった。男は彼女の邪魔をしないように、素朴な笛を吹いた。素朴でまた美しく。
気がつけば、二人のいる間のそばに、人だかりができていた。

「大殿様が、姫様の舞をほめていられましたよ」
「ふん、老いぼれめ」
悪態を点いてはいるが、心なしか嬉しそうだ。
「姫様、」
「どうしましたの」
「また舞ってくださいね」
姫は目をぱちぱちさせて、そして笑った。
「もちろんですわ」




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DOGOD69




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