一次創作
なにかをもとめていた

(2010/11/03)

(曹叡)




陛下も皇后も、受け入れがたかった。理由など気にすることはない。ただ気にくわない、それだけだ。
剣に弓を携えて、珍しくも陛下と狩りをしていた。当然だが護衛もいる。陛下の機嫌を損ねないように、誰もが緊張していた。小さい、小さいのだ。叡は無意識に侮蔑の眼差しをしていた。
「陛下、あちらに鹿が」
親子のようだった。母に、子が寄り添っていた。まだ、こちらには気づいていない。
陛下が弓を引いた。狙いを定めて、放たれた矢は胸に突き刺さっていた。護衛兵が陛下を囃す。叡は動かなかった。突然のことに驚いた小鹿は、あっという間に逃げていった。
宮殿に戻ると、叡は陛下に呼ばれた。乗り気はしないが、無視するわけにもいかない。不機嫌な彼を、従者が宥めた。
「……なぜ、子を射なかった」
叡は愛想笑いを浮かべ、袖で口元を隠した。
「陛下が母鹿を射止められたではありませんか。私が子鹿を射つことなど、できましょうか」
うつむき、目許まで隠す。
「仁徳の主か、まぁ、いい」
それ以上、陛下は何も言わなかった。叡は袖の下で、陛下を強く睨み付けていた。
このすぐ後、叡は平原王となる。
空気がわずかだが暖かくなってきていた。夏が近づこうとしていた。





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母の甄皇后は父の文帝曹丕に殺された。そんな曹叡は、後、自らの妻を殺してしまう。そんな彼の最期は、温もりを求めるかのように、我が子へ手を伸ばす。待っていたのは、静かな拒絶だった。

曹丕は、無双イメージを拭いきれていません。しまった。

人って弱ると甘えたになるよね。似たようなものかな、と。
甄皇后も毛皇后も、夫への愛ゆえに、死を賜ることになったのかな、と。




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