朝が別つ
朝。朝とは、訪れるものだ。安らかな、きらきらとした、始まりだ。決して追い立てられるものではない。朝陽は、私を責め立てる為のものではなかった筈なのだ。
あぁ。でも。かぶりをふる。夜の中にいることは、きっと正解ではないのだ。

「じゃあ、もうここまでだね」

君の声がする。どこまでもやさしいその声は、静かにお別れを語りかけていた。声に溶けるように、滲むように、あかい光が視界にゆらゆらと流れてくる。こんなに泣きそうになるくらい、きれいな光を君と見てしまったことを、喜べばいいのだろうか。それとも、胸に込み上げるこの気持ちのままに泣いてしまってもいいのだろうか。

「さよなら。いとしいひと。きっと、またどこかで」

待って。待ってよ。まだ、私は何もできてない。伝えられていない。行動に移せていない。話せていない。作れていない。後悔にするには多すぎる、したかったことが、たくさん、あるのに。
手を伸ばす。呑まれかけたその闇に。
飛び込んだ先の、見開いた君のうつくしい瞳に、泣き笑いでくしゃくしゃな私の顔が見えた。

「さよならを、言うくせして、また、だなんて。ずるいわ。言葉で、ずぅっと、しばられるくらいなら、あなたを離してなんてあげないわ」

もうやわらかな赤はない。黒い、黒い、闇だか、光なんだか、もうわからないけど。でも君の驚いた顔が、口元からゆるゆる緩んで、幸せそうに崩れるのだけは、いやにはっきりと映ったから。
私はもう出逢えない朝を、最後の勇気のきっかけだと、頭の片隅で敬い愛しながら、間違いでも、君とこの闇を、いきたいと思うんだ。






bkm
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