1限完全サボりからの2限目。前の席の子が「烏丸さんおはよー!今日も盛大に寝坊だねぇ」と笑いがらに挨拶、ぺこぺことお辞儀をする。
2限は英語、いんぐりっしゅ。とりあえずあれだ、loveとlikeを書いてみよう。…ルーズリーフに書いてみた。意味がわからない、こんな事書く自分が。書いてどうする。消しゴムで消す。そしてくるくるっとシャープペンを回す。「ここの文法はー」と先生の声をBGMに腕を付き空を見上げる。かきかき、ねこの落書き。ぶーぶーっと誰かの携帯電話のバイブ音。いつも通りですなぁ…。
いつも通りじゃないのは、私。


I'm in love with you.


はははは、何書いてんだろう私。机にうつ伏せになる。掻き乱される。やだなぁもう。いつまでも胸が痛いのです。










お昼休み、購買でおにぎりとからあげを買い教室へ戻ろうとした、ら

「弥生みつけた…!」

なにやら慌てるような赤葦京治君。首を傾げる。私の手の中にあるおにぎりと唐揚げを見て赤葦京治君はなにやら納得した。「教室覗いたら居ないから…避けられたかと思って」と言う、あ、そんな気回らなかった。「ね、一緒にたべよ」と手を引かれる。逃げる暇は無し。
とととと、と付いていくと誰もいない中庭へ。ベンチが一つ、二人で腰掛ける。…無言。くぅ、とお腹が悲鳴を上げたのでかさかさとおにぎりの袋を開けた。赤葦京治君もパンの袋を開ける。…パンなのか…へぇ。もぐもぐもぐもぐ。

「弥生」

うん?と赤葦京治君に顔を向ける。特に表情は無かった。多分私も同じだろう。ただちょっと、むすっとしてる…?

「今朝、ごめん。いきなり、嫌だったでしょ」

むすっとしていたわけでは無かったようだ。今朝のアレを気にしていたようで。いや、そりゃあ気にするだろうけども。奇声上げて逃げたからね私。そして言われて気づく。…嫌?あれ、私は嫌だったのだろうか。吃驚は、したけど嫌では…?むぅ、とおりぎりの具材をにらみつける(今日は紀州南高梅)。そう、嫌じゃなかったと思う。じぃ、っと具材から目を離し赤葦京治君を見る。

「…弥生?」

じぃーっと赤葦京治君の口を見る。うむぅ、これ言ったら変態だよねそうだよねうんやめと「言いたい事あるなら言っていいよ」むむぅ…。

「……」
「弥生」
「…も、」
「も?」
「………もう、い…っか、い」

口に出してみて死にたくなりました。あの時は吃驚してよくわからないうちに逃げてしまったけど、改めて…ち、ちゅーしたらわかるんじゃないかと思っただけなんですああああやめて羞恥心で死にそうだ言わなきゃよかった…!ばっと手で顔を覆い隠す。…無言。あれ、やっぱり引かれた?引かれた?指の間から、赤葦京治君の表情を窺う…と、赤かった。赤葦京治君が口元を腕で隠し、赤面していた。…な、なんという破壊力…っ。更に私の顔が熱くなる。

「…弥生」
「…ぁぃ…」
「そういうの、やめて。自制利かなくなる」
「………っ」

このひとほんとなんなのですか!
さっきとは打って変わって真顔でぐぐぐ、と顔を近づけてくる。赤葦京治君の胸に手を押し当て、突っ張り棒のように腕を張る。が、力が強くて結局近づかれる。

「もう一回、していいってことでしょ?」

そういう解釈になるんですかそうですかそうですよね。「弥生」と呟き、おでこに唇が落ちる。続いて頬、手の甲、指先。ぞわりとするが、それは嫌悪感ではない。なん だろう、これ。たべ られ ちゃ、う。

「弥生」
「…っ」
「名前呼んで」
「ぁ……け、いじく」
「うん」
「けいじくん、けい、じ…くん…けいじ……っ」

大きな手が、私の後頭部に回り引き寄せられる。くち、が。ちょっとまって。待って待って。ざらり、舌を弄ばれる。息の仕方が、わからない。力も入らない。なんとか、京治の制服を掴む。

「弥生」

漸く唇が離れ、こつんとおでことおでこが当たる。すりすりと猫がじゃれる様に触れ、離れた。もういっぱいいっぱいです。ぽろぽろ涙が出てきた。京治の指先が涙を拭う。

「…泣かないでよ弥生、悪いことしたみたいじゃないか」
「わ、悪怯れる様子は一切ないのですか…っ!」
「俺、悪くないだろ?もう一回、なんて弥生が煽るから」

煽ってない煽ってない!!なんで私が悪いみたいな…!ガッ!と立ち上がる。ビシッと京治を指さし睨みつける。このおおかみおとこめ…!


「あ、あいむいんらぶ…うぃずゆー!!」

捨て台詞(?)を吐きだし猛ダッシュで逃げた。追いかけてくる様子は無いようだ、と少し安心した。あと私、英語の発音ちょうへたくそ…!




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紀州南高梅入りおにぎりどこいった?(しらぬ)


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