とうとうこの時期がやってきました。受験です、高校受験です。さて、どうしよう。私の頭の中には妄想と創造が広がります。高校入ったら近所のお姉さんのように…!って違う、高校入る妄想ではなく、現実を見なければ。

とある日、私は先生に呼び出された。「篠宮、高校はどうするんだ?」と言う言葉。ボロボロになった進路調査票には、名前のみ。そう、私は進路についてかなり悩んでいた。

成績優秀、先生からの受けも割と良い、そして世渡り上手な猫かぶり。私超完璧人間。そんな私が先生にいただいた言葉は「篠宮の成績ならどこだって行けるんだからとりあえず第一志望決めてみろ」だった。どこでも…行ける。そう言われると本気で悩んでしまう。…憧れの東京に行きたいです。でも人がごみごみしているところは嫌いだ。うーむ…いっかいネットで高校でも調べようかな。渡された進路調査の紙を手に、私は廊下を歩く。

徹は、どこに行くのだろうか。ふと、徹の進路について気になった。結局のところ、私と徹の関係は曖昧だ。付き合っているらしい、私は全く自覚が無い。前と変わらない。ちょっとだけ、徹の雰囲気が柔らかいぐらいで。でも別にデートする訳でも、部活があるから一緒に帰ることも無い。仲の良い友人、クラスメイト。

「なんだかなぁ…」

つまらないなぁ。自分でそうあるように仕向けたはずなのに、なんとも味気ない。あと半年ほどで、私達は中学を卒業する。変な夢を持って意地を張らずに、もっと中学を楽しく生きればよかったかなぁ…なんで今更、こんな子供みたいな後悔が押し寄せるのだろうか。

教室に戻ると、徹が私の席に座っていた。私を見ると笑って「席温めておいたよ!」なんて言う。いらないよまったく…。微妙にぬくい椅子に少し複雑な思いを抱いて座る。

「八雲が呼び出しなんて珍しいね」
「うん、うっかり提出物出し忘れちゃって」
「珍しい。真面目な八雲が」

私本当は真面目なんかじゃないんだよ。私は私を作ってるだけなの。そんなことは言えなかった。中身はああはなりたくないけど、それでも派手なクラスの女子が少し羨ましかったりだとか、本当はそんなこと思ってるんだよ。地味に括られた髪の毛を、撫でる。

ねぇ、徹。高校どこに行くの?
そう聞こうとして止めた。私は私がわからない。

「ねぇ八雲」
「なぁに徹」
「だいすきだよ」

彼は言いたい事を言いたい時に言うらしい。教室で、沢山の人間が居る中で柔らかい笑みを浮かべてそんな言葉を私に送るのだ。私は、曖昧に頷く。私は、徹が好きなのだろうか。