「おにいちゃん!」

部活の休憩時間、体育館に明るい声が響いた。扉の近くには小さな影。「…こども?」と誰かが呟いた。あれ、なんでなまえが?なんて思っていると、なまえは俺を見つけた瞬間太陽のような笑顔を浮かべてこちらに走って来た。ドンッとお腹に衝撃が走る。おっとっと、と俺は弾丸のように飛んできた小さな体を受け止めた。

「おにーちゃーん!」
「どーしたのなまえ」
「おとどけものでーす!」

じゃーん!と小さな腕に掛かっていたのは弁当入れ。家出る時弁当忘れて途中コンビニでパンを買ったんだけど、態々持ってきてくれたのか。…なまえ1人で?

「なまえ、ママは?」
「おそといる!とどけてらっしゃいって!」

母さんグッジョブ。「そっかーありがとーなまえ」と腰を折り、目線を合わせて頭を撫でると嬉しそうになまえは頬を寄せた。若干名、俺となまえの様子を見ていた部員が後ずさる。え、何その反応。それを見てケラケラと笑うのは3年組だ。


「……お、及川さん」
「んー?どうしたの金田一」
「そ、その子は…?」

「及川さんの隠し子ですか」

国見ちゃんの言葉に「ぶはっ!」マッキーとまっつんが噴き出した。ちょっと、俺まだお父さんの歳じゃないんだけど!「かく、しごってなぁに?」なんて聞くなまえに「そーんな言葉覚えなくていいからねぇ」と頭を撫でた。変な言葉教えたら許さないよ国見ちゃん。

「え、違うんですか?」
「ちょっと、金田一も国見ちゃんも俺を何だと思ってんの?」
「及川さんの言う「ママ」さんが及川さんの奥さんだと思った」
「俺まだ高校生だけど!?」

金田一と国見ちゃんの中の俺はどうなっているんだろうか。「ママってうちのかーちゃんだし!ほーらなまえ、ごあいさつ!」と俺はなまえを抱き上げた。


「俺の妹の!」
「おいかわなまえです!ええとぅ、4さいです!」

ぶいっ!と指を立ててなまえが元気にあいさつをする。それじゃ2歳になっちゃうよなまえ。数人が微笑ましくなまえを見る。

「よー、ひさしぶりだななまえ」
「岩ちゃん!こんにちは!」
「おお、こんにちは」

わー、岩ちゃんの穏やかな顔珍しー。岩ちゃんにそんな顔させちゃうなまえはやっぱり天使だね。


「及川さんの」
「妹」

2年・1年組が白い目で見てくる。ちょっと、俺の妹だからなんだって言うのさ!ぎゅーっとなまえを抱きしめると岩ちゃんが口を開く。

「大丈夫だ、なまえはこの年でもうきちんとしてるし、クズ川で懲りた及川母がちゃんと育ててくれるはずだ」
「俺で懲りたってどういう意味!?」
「及川先輩の様に育たない様に祈るばかりですね」
「誰今暴言言ったやつ!」

なんだよみんなして、俺が不良みたいな言い方!「不良とかじゃないけどもう中身がアレじゃないですか及川さん」と後輩くん達が俺を責め立てる。ちょっと待って。俺そんなにひどいの?

「おにーちゃんは良い人です!」
「なまえ…!」
「それとおにーちゃんとけっこんするのはなまえです!」

「おにいちゃんがそうしろ、って言ったのでなまえがけっこんするのはおにーちゃんなのです!」と言うなまえのセリフに全員が凍った。あ、岩ちゃんが怖い。「純粋無垢な子供になに言わせてるんですか及川さん」「ねーわー」と声が上がる。だって天使、マイエンジェル!よその男に渡すとか出来るわけないでしょ!!

「ちなみにさぁなまえちゃん」
「なぁに?ですか?まっきー」
「この中で一番好きなのは誰かな?」

こてん、と首を傾げるなまえ。何聞いてんのさマッキー、そんなの俺に決まってるじゃん。なんて思っているとなまえは「ん!」と指を指した。

「岩ちゃんがいちばんすき!」
「ぶはっ!ははははは!」
「あはは!!及川岩泉に負けてやんの!」
「なまえ!?」

ショックでボトッとなまえを落としてしまった。見事に着地するなまえに安心…じゃなくて!いくら岩ちゃんでもそれは許さないよ。
岩ちゃんは俺を見て溜息を吐いた。なにさ、なまえに好かれてるからって余裕満々だって!?俺は岩ちゃんに噛みつく様に「岩ちゃんのあほー!」と叫んだ。








「えーっと、なまえちゃん」
「はい!」
「俺、国見英。よろしくね」
「くにみちゃん!」
「(…及川さんの妹だ…)及川さんに似ませんよーに」
「あ、俺も祈っておく」

「ちょっと国見ちゃんも金田一もなに拝んでるのさ!」


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漆原さまのリクエストの幼い妹主でした!いろいろリクエストいただいていましたが、私の書きたいものを選択させていただきました。
妹=及川が定着してしまいまして(あとシスコン)
幼い妹…うん、及川だな。と速効で決定しました。歪みない及川ある意味安定及川。3年組とは顔見知りです。
書いていてとっても楽しかったです!リクエストありがとうございました!