にやにやと二口が笑う。
待ち構える様に私の学校の校門前に立っている残念彼氏を睨む。他高の制服が目立つことこの上ない。隣に居た友達は「ははは…は…なまえがんばれー」と肩を叩いた。ぶっちゃけ頑張りたくない、ここから全速力で走り去ろうかとも思ったが相手は強豪伊達工バレー部の現主将だ。追いつかれるのは目に見えている。

「ごめん」
「いいよ、なまえの彼氏がああなのはいつもの事じゃない」

じゃあね、と友達と別れる。溜息を吐き私は二口の前までゆっくり歩く。ばっと腕を広げる。周りの人間は「なんだ?」と横目で見る。よし、やるか。私は1歩を強く踏み出した。

「なまえ、ほれ俺の胸に」
「ふんっ!」

抱きつくふりしてアッパーをかました。ぼへー!?とよろめく二口倒れろ地面に這い蹲れ。「おーおーみょうじ、あんまし彼氏をボコってやんなよー!」と笑いながらクラスの男子が通り過ぎる。

「俺の彼女に気安く喋らないでくださーい!」
「くそうざ」

笑いながら私のクラスの男子に手を振る二口、仲良しかよ。知り合いでもないくせに。私たちの横を通る数人の生徒が「今日もご愁傷さま」という視線を向けてくる。ちょっと、ウチの生徒この光景に慣れ過ぎじゃない?

「なまえ、帰るぞ」

にやにや笑う二口が手を差し出す。私はその手を「ていや!」と叩き落とした。そのまま二口を置いて歩きだす。「…ツンデレ、いや…ドSも有りだな…」なんて恐怖の独り言が耳に入ったが、全て聞こえなかったことにした。




「ちょっと」
「んー?」

んー?じゃねーよ。はっ飛ばすぞこの野郎。
2人でバスに乗る。私の首筋に唇を寄せ、タイツの上から太ももを撫でる。公共の場で何たる暴挙。バスの中だからと大人しくしている私を誰か褒めてほしい。これで他に誰か乗ってたらマジギレしてる。いや、もういっぱいいっぱいだけど。コイツ本当に警察に突き出してしまおうか。

「ねぇ二口」
「なに」

二口の制服のネクタイを引っ張る。顔が近付く。手を、二口の足に乗せる。二口が目を見開く。薄く口が開くのが見えた。お生憎と、期待されることはしない。手を這わせる。びくり、二口の身体が揺れた。

「なまえ――」
「二口、やめないと―――潰すぞ」



きちんと座って目を逸らす二口に満足。
前に1度、耐え切れずに二口のあれを蹴りあげた事があった。だってアイツ、外出先でスカートの中に手を突っ込もうとしたんだもん。仕方ないよね。
たまに「踏んでくれてもいいんだけど?」なんて言っていた二口だが、流石に蹴りあげたのは堪えたらしい。暫くセクハラはしてこなかった。以降、これは私の武器になった。

「俺思うんだけどさ」
「なに?私は二口がセクハラ止めればいいと思う」
「なまえ、セクハラってその行為が嫌って思った時にセクハラに」
「私が「ちょっとぉ!やめてよぉ」って感じに嫌がってると思った?殺すぞ」
「で、俺が思うに」

シカトすんなよ馬鹿二口。しかし、真剣な表情をする二口を見て首を傾げた。まぁ十中八九とんでもなくくだらないことを考えているんだろうとは思うけど。

「慣れたら気持ちよくなるんじゃないかと思って」
「よしオーケー。再起不能にするよ?遠慮せずに行くよ?どうする?二口が学校の実習で使う道具使って潰す?なんか凶器みたいな道具で」
「目がマジなんだけどお前」
「マジだもの」

あれだ、青根君に先に謝っておこう。君のところの主将使い物にならなくなったらごめん、って。まぁ二口が居なくても伊達工はやって行けるだろう。南無。

「流石に拷問は勘弁」
「これで「それいいかも」なんて言ったら警察突き出してるところだったわ」
「………悩んだ結果」
「悩むなよ」

ほんと、この変態どうにかしてくれ。



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ルイさまリクエストの変態or残念彼氏と冷たい目で見る夢主でした!コレジャナイ感たっぷりでごめんなさい。
好きなキャラがにろくんだったので、お相手をにろくんにしましたが…これはきっと怒られますね。罵倒される準備は出来ております(どんとこい)
にろくんとは他高生設定でした。お家はきっと近所です。
ルイさまリクエストありがとうございました!