あ、電話だ。着信音が鳴る携帯電話のストラップを引っ張って画面を見る。画面には「国見英」と言う名前。国見が電話とは珍しい。そんな事を思いながら私は携帯電話をベッドに放り投げた。さて、と。暇だから新譜取り込もうっと。私はPCの電源を付けた。







「ねぇ、なんで昨日電話出なかったの」
「え?」

むすっとした表情の国見が目に映った。皺が寄る眉間に人差し指を添える。むにむにと突っつく。「なにしてんのさ」とぺちんと手を叩き落とされてしまった。残念。で、なんだっけ。電話…?昨日記憶を思い起こして…ああ、と思いだした。


「国見が電話って珍しいよね」
「用があるから電話したのに出やしないし」
「うん、ごめん」
「忙しかった?」
「ううん、暇だった」
「じゃあなんで電話に出ないんだよ」
「だって学校で話せばいいじゃん」

そう言うと国見は呆れた表情を見せた。なんだろうか、その表情は。ずずずずーと私は紙パックのジュースを飲む。

「なぁ」
「なぁに?」
「俺ら付き合ってるんだよな?」
「そうだよ…あれ、違うの?」
「違うくない」

何をそんなに不機嫌そうな顔をするのだろうか。私は首を傾げる。「なんか俺、馬鹿みたいじゃん」と国見が零した。

「声聞きたいから、電話したのに」
「えっ」
「なに?」

いや、国見ってそんなキャラだったんだなって吃驚して。いつだって気だるそうな国見は、私に告白した時ですら気だるそうな顔をしていたのだ。それが、声が聞きたいから電話した、だなんて。

「国見の偽物?」
「お前俺をなんだと思ってんの?」

省エネ脱力人間だと思ってるよ。むすーっとする国見の頬を両手で包む。そしてむにむにと揉んだ。「さっきからなんなんだよ」と言いつつ為されるがままの国見に私は笑う。

「不機嫌国見の機嫌取り」
「こんなもんで機嫌治ると思うなよお前」
「えー」

それでも満更じゃなさそうにむにむにされる。なんか国見猫みたい、なんて思ったり。よしよしと頭を撫でると流石に怒られた。


「電話出てよ」
「めんどくさいからやだ」
「はぁ?」
「あと私電話すきじゃないの」

なんで?と国見が首を傾げた。私は国見の髪の毛をサラサラと掬う。メールだったら別にいいんだけど、電話は嫌い。

「だって声聞けても会えないじゃん」
「…え」
「声聞くと、会いたくなるじゃん。でも、会えないからきらい」

頬を撫でる。少しだけ、気だるげな国見の顔が赤く染まったような気がした。珍しい国見の表情を見れて、私の顔が綻ぶ。ふふ、国見可愛い。思わず額に唇を落とす。そうすると国見はさらに赤くなった。


「お前らここ教室」

いちゃつくな。と怒る男子の顔も少し赤かったが特に気にしなかった。


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すこぶる短いですが、優生さまリクエストの冷めた(余裕のある)女の子と国見君のお話でした!ちなみに女の子の表情筋も死んでます。この一連どちらも無表情で会話してると想像すると…何故でしょう萌えます。ちょっと乙女入ってる国見君も好きです。
優生さま、リクエストありがとうございました!