「…ん?」

何故か制服のまま寝ていた。月あかりが部屋を明るく照らす。…なんで、寝てたんだろ…しかも制服のまま。起き上がろうとすると首に誰かの腕が回った。…うで?


「蒼…せんぱい」
「……んんん?くに、み?」
「そこはあきら、って呼んでくださいよ」

ぐいっと、引き寄せられる。ベッドの上、月あかり、国見と二人。ふれる。
ちょっと、思考が追いつかない。うん…うん!?まだまどろんでいた意識が完全に覚醒した。気分悪くて国見に引き摺られるように家まで送ってもらって、キスされて押し倒され、て…?いや、ちょっと待ってね。そこから記憶が曖昧だ。待って待って。服は、着ている。うん、特に乱れて、ない。


「あの後蒼、寝ちゃったんですよ」
「あの状態で私寝たの…」
「ええ、あの状態で寝ました。俺帰ろうかなって思ったんですけど抱き枕にされてしまったんで」
「…う、うわぁ…」
「生殺しも大概にしてください。ねぇ、蒼」

生殺しって言うな。いや健全な高校生男児には生殺しだっただろうけども…!とりあえず、腕を離そうか?なんて言うと国見の顔が近づいた。首筋を、かまれる。


「ちょ、国見」
「流石に取って食おうってわけじゃないんですから」
「食われそうな勢いなんだけど…」
「これくらい大目に見てくださいよ。本当は襲いたくてしかたないんですから」
「うわー、本気トーンだー。やめて国見ほんとに」

ぺろり、と舐められる首にぞくっとした。ひっ、と声を出すと「蒼かわいい」とキスされた。この子の色気半端無いぞ…。で、でも流されない。うん、流されちゃ駄目。



「くにみ」
「あきらって呼んでください」
「…あきくん」
「なんで普段付けないくん付けなんですか」
「あきらー」
「はーい」


ぐいぐいと抱きしめられた。このままだと、なんか流されてしまいそう。なんて思っていたら腕が離れた。国見が上体を起こす。「うわ、もう8時になりますよ」と国見がスマホの画面を見た。…8時…は、ち?

「えっ」

びっくりして起き上がった。ぎしり、ベッドが軋む。いやいや8時って。

「国見帰らなくて大丈夫!?」
「俺は大丈夫ですけど。両親今日帰ってきませんし、蒼のお母さんには許可取ってるんで」

許可って何!?え、お母さんなに言ったのっていうか見たの!?なんて慌てていたらパチン、と電気を付けられた。

「もー蒼やっと起きたー。国見君に謝りなさい。抱き枕にしてごめんなさい、って」
「あ、役得だったんで大丈夫です生殺しも含んでましたけど」
「ちょっとそこ二人で平然と会話しないでよ…!」

そんな私の言葉を無視して、お母さんは「国見君お腹減ったでしょー?ご飯作ってあるから食べて。あ、お泊りも全然いいからね。というかもうこんな時間なんだから泊っていきなさい!」と続ける。普段あまり表情が変わらないはずの国見は笑顔で「じゃあお願いします」と返事をした。

「お布団は…蒼と一緒に寝るから大丈夫ね」
「はい、大丈夫です」
「大丈夫じゃない…!」

じゃあ、ご飯温めてくるからちょっとしたら降りてきなさい。とお母さんは部屋を出ていった。…なんなの、この状況は。

「蒼」
「…なにかな、あきら」
「襲わないから安心してよ」

まったく持って安心できない。

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