本当に国見は家まで送ってくれて。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だって、国見の家ここから遠いし。母はまだ帰ってきていない。「鍵出してください」と言う国見に鍵を渡す。そのまま一緒に部屋まで進む。そういえば、国見家に来るの初めてなんじゃないかな、なんて頭の隅で考えながら自分のベッドに寝かされた。
あーあ、シャツ明日皺になっちゃうかなぁ。流石に国見の前で着替えは出来ない。そのくらいの恥じらいはある。国見は体温計と睨めっこ。

「熱は、無いようですね。むしろ無さ過ぎて怖いんですけど」
「平熱低いから気にしないでよ。本当にただ気分が悪いだけだから」
「朝見た夢ですか?」


――たかが夢でこんなに気分が落ち込むなんて、なんて私はメンタルが低いんだろうか。いや、あれは私にとって。

「なんの夢見たか、聞いていいですか」
「……階段から、落ちる夢」
「はぁ……。あんたまだあの時の事憶えてるんですか」
「忘れるわけないでしょ」
「俺はもう忘れました」
「いや、だって私国見に怪我を――」

口を口で塞がれる。突然過ぎて息が止まった。


「ほんとばか。あんな怪我、今は痕すらありませんけど?」

そんなことより、今の状況凄く美味しいですよね、寝込み襲ってる背徳感っていうか。と悪い顔をして国見は笑った。


「ばっかじゃないの、ばっかじゃないの」
「2回言わなくても。しかも馬鹿は先輩の方ですよ」
「中学生に助けられた挙句、怪我させちゃった私の罪悪感が。しかも運動部の子を」
「大怪我したんならともかく、ただちょっとだけ怪我しただけじゃないですか」
「全治2週間って、ちょっとの怪我じゃないと思うんだ」
「完治するまで毎日先輩が会いに来たから役得でしたよ?」
「減らず口」
「減らず口で結構。あんたが気になって仕方なくて青城に行ったんですから。そんなくっだらない夢見てないで俺を見ててくださいよ」
「いや、バレーやりたくて青城きたんでしょうが」
「それ建前で本音は」


ああ、もう言わんでよろしい。と国見の口を押さえる。顔、ちょっと赤くなりましたよ?なんていうからもうこの子ほんとやだ。


「蒼」

また、キスをされる。最初は触れるだけ、段々深く。息苦しくなると、漸く口が離れる。「すいません、先輩。襲いたいんですけど、いいですか?」なんて笑う国見に思いっきり鉄拳を食らわせた。不意打ちで名前呼ぶとかほんと卑怯だ。

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