【とある王様への言葉】


「国見、俺みんなから言われるんだ」
「…なにを」
「無茶な指示止めろってさ」

知ってるよ、俺はそう口にはしなかった。
まぁ確かにトスに合わせるように「もっと早く」っていうのは無茶だよな。俺は足を伸ばし、空を仰ぐ。「でも早くしたら相手のブロックには捕まらないだろ?そうしたら」あーあ、こんの馬鹿。俺らをロボットか何かと勘違いしてないか?


「影山、人間はそんな早く動けない」
「行ける」
「何を根拠にそんな事言うんだよこの馬鹿」
「国見できてるじゃねーか」

俺のそれは他の人と違うからな。「マイナステンポ」とだけ俺は言った。だたしアレは疲れる。影山が俺に合わせてくれるならまだしも、なんとなく感で俺がジャンプしてるんだ。神経すり減らして。「じゃあ俺のトスをスパイカーに合わせればいいのか」影山がそう言った。まぁそういう事だけどさ。俺は立ち上がる。地面を蹴る。


「必要ない」
「え?」
「誰も、お前のトスを打ちたいと思ってない」

影山の顔を見た。酷く悲しそうな顔をしている影山が瞳に映る。影山には悪いが、これは事実だ。俺以外、お前のトスなんて打とうと思ってないんだよ。


「俺が、他の奴らに合わせれば」
「いいや、必要ない」

もう、俺達は駄目なんだよ。そう言うと影山の目が揺れた。俺は続ける。破綻してしまった俺らに、もう関係修繕の意味は無い。


「影山、今のお前が変わる必要ない」
「…」
「中学は、そのままでいろ。どうせ変わりっこない」
「……」
「高校、青城には絶対行くなよ。あそこには及川さんが居るし、金田一や俺も居る。だから、青城だけは絶対に駄目だ」
「俺は、」

泣いているような気がした。涙は流していなかったけど、でも確かに影山は泣いていたんだろう。


「俺は、お前らとバレーがしたい」


俺も、そうだったよ。
泣いたのは、俺だったかもしれない。

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