★   

  ★

★ 


大人になってから出直してくださいませ!
(ピーターパンは不必要!)


「不知火先輩」
「大却下」
「まだ何も言ってないです」

最近木兎後輩こと赤葦京治に付きまとわれてる。この前の木兎の頭なでなで(からの恐怖政治)がかなりダメージを与えた様で、「すいません、一回でいいんで撫でてください」と首を傾げて迫ってくる。ちょっと可愛いとか思ってない全然思ってない。でもめんどくさくなってきたから撫でてやってもいいかな、とか思い始めた。


「だきしめてください」
「なんでグレードアップしちゃったの?」
「木兎さんにはやってなんで俺にはしてくれないんですか」
「他人だからじゃないかな。っていうか木兎にもしてないし」
「してたじゃないですか。木兎さん再再再試験を漸く合格した時」

してねーよ。…ん?待てよ…?
そういえば再再再試験合格した時なんか私抱きかかえられたな。そりゃあもう赤ん坊をあやすように持ち上げられた。胴上げみたいに私の身体何回か宙に浮いた。教科担当と担任が泣いて喜んでた。今思うとあの空間カオスだった。あ、結局私勉強教えましたハイ。胃炎になるかと思った木兎馬鹿すぎて。再試験でキレて、再再試験でマジギレして再再再試験で胴上げモドキされて

いや抱きしめてねーよ。結局抱きしめてねーよ。何処をどう歪曲してそうなったの。

「とても仲が良さそうでしたね」
「浮気現場目撃して白々しく言うように言わないで」
「浮気という自覚は」
「ねーよ」
「ですよね」
「うん」
「ひどいです」

もう誰か助けてくれ。


★   

  ★

★ 


「しきみは年下に懐かれるのよ」
「木兎年下じゃないじゃん(年下だけど)」
「ん?なんか言った?」
「いんや、言ってない言ってない」

危ない、思わず心の声が口から出るところだった。赤葦京治を撒いて友人と会話。まぁ、どこで盗み聞いてるかわからないけど。じゅるるるるーと野菜ジュースを摂取。

「精神年齢低い人に気に入られるのよしきみは」
「ほーん?」
「噂のイケメン君があーいう性格だとは思いもしなかったけど。めっちゃ懐かれてんじゃん。なにしたん?」
「恐怖政治」
「だからなんなのよそれ」

だから恐怖政治だってば。ずずずーと野菜ジュースを飲み干す。


「頭撫でてくれとか抱きしめてくれだとか」
「それさ、やってほしいよね」
「は?」
「自分が頭撫でてもらいたいし、抱きしめてもらいたいよね」

……うん、それはあるな。ぐしゃっと潰した紙パックをゴミ箱にシュートする。よし入った。脚をぱたぱたと遊ばせる。空を見上げる。

「…それは、あるわ」
「しきみが同意した!?」
「なによぅ。私だって癒しが欲しい。出来れば20代半ばの人に抱き締められたり頭撫でられたりしてもらいたい」
「出来れば20代半ば、ってところを消そうか」
「むり、譲歩しない」

譲歩するとすれば、私たちがあと10年してのお付き合いとかかな。うん。やっぱ自分の中のもやもや半端ないし。

「【今】が嫌なのよ」
「ふぅん?早く大人になりたいってかー?」
「まぁ、そういうこと」

なんか違うけど。まぁ20代半ばだったらもういいかな、みたいな。

「じゃああんたの言う20代半ばにまだ、ああいうアタックされたら付き合う?」
「え、ドン引きする」
「どうしたら靡くのあんた」
「大人になって大人の対応されてラブラブになりたい」
「ドン引き」

なんでさ
<< | >>