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興味ございませんので
お引き取り下さいませ



「イケメンどーだった?」
「木兎がバレー部とか聞いてない」
「言ったら行かなかったでしょ?というかあれだけバレーバレーって五月蠅いのによくバレー部だって知らなかったね」
「シャットアウト」
「しきみ相変わらず酷いよね」

いや、苦手なんだってあのテンションほんとに。自分からは近付かない様にしているのになんでか寄ってくるんだよね。餌なんか上げた覚え無いぞまったく。

「じゃあイケメン君には会わなかったんだ」
「んにゃ、会った会った。会話した」
「え!?しきみが!?」
「ちゅーか聞かれた?」
「え!?イケメン君に!?何を!?」
「恐怖政治の仕方を教えてくれと」
「…なんだそれ」

きっと先輩後輩の下剋上だよ。ずずずずー、と今日も紙パックのジュースを飲む。 ちなみに野菜ジュースである。私が高校生の時絶対飲まなかった飲み物だ。大人になってからわかる。やっぱり大事だよね野菜。


「で?」
「で?ってなに」
「好みだった?」
「…んー…まぁ…?」
「あのしきみが…!」
「なんの感動よ」

まぁ…?という回答は許容範囲内なのか。別に好きじゃないぞ、惚れてもいないぞ。そう言うと「えーつまんなーい!」と声をあげた。人で遊ぼうとするな。


「しきみー」
「却下」
「まだ何も言ってない!」
「じゃあ当ててやろう『大学生と合コンするんだけどさぁ』」
「……」

図星か。いや知ってたんだけど。さっき別の友達が呟いてたぞツブヤイッターで。高校生が大学生と合コン…というか高校生で合コン。ないわ。

「他を当たってくださーい」
「年上好きって言ってたのに!」

大学生も年下なんですけど(精神年齢的な意味で)。20代までは誰かと付き合うとか考えられないなぁ。…あれ、もしや私寂しい人?いやいやいやいや、でも精神的に耐えられないから。


「不知火先輩って年上が好きなんですか」
「…はっ!?」

背後から声。バッと私と友人は後ろを振り向くと、そこにはイケメン君赤葦京治が立っていた。「すいません、盗み聞きしました」と悪びれることなく言い放つ。なんだこの人。

「バレー部の!」
「はい、バレー部です」
「なに!?なになに!?しきみにキョーミある感じ!?」
「ええまぁ」

おいそこ、何してる。きゃー!マジで!!と赤葦京治の手を握る友人。「どうもしきみの友人です!もしよかったらこの子あげるわ!」ちょっと私モノじゃないんだけど。なに勝手に言ってるの。友人は立ち上がり「じゃあごゆっくり!」と走り去った。あれ、多分途中で戻ってきて盗み聞きするやつだ。バレバレだぞ友人A。


「隣失礼します」
「お断りしまーす」
「で、年上が好きなんですか」
「聞けよ」

マイペース人間だらけじゃないか。じぃーっと私をみる赤葦京治に「まぁね」とだけ返しておいた。


「そうですか」
「そうですよ」
「年下駄目ですか」
「駄目ですね」
「そうですか」
「うん」
「……」


え、何そのあからさまな落ち込み。「あのさ」と私は声をかける。

「あの時初対面だよね?」
「まぁ会話したのはあれが初めてでしたね」
「だよね」
「でも俺何度か不知火先輩の恐怖政治見てたんで。惚れ惚れする木兎さんの扱い方ですね」
「私が言うのもなんだけど、君木兎の事どう思ってんのさ」

ほんと人の事言えないけどね。うーん、赤葦京治は悩んで一言


「尊敬する先輩ではあります」

とても尊敬しているようには見えない。

「バレーをする木兎さん、すごいんですよ」
「へぇ」
「…すいません、木兎さんに興味持たれても俺が複雑な気持ちになるんですけど、そう全く興味ない感じに聞かれると、それはそれで複雑です」
「へー!まじか!木兎バレーすげーのかー!!」
「すいません無理させてすいません普通でお願いします」

ああ言えばこう言う。いや私が悪いんだけど。「ん、まぁ聞くから続けて」とけだるーんに聞く。

「あの人全国で5本指に入るスパイカーなんですよ」
「まじか、人は見掛けによらないねぇ。アイツこの前の英語のテスト8点だったよ」
「要らない情報聞いてしまいました」
「担任泣いてたわ」
「そりゃあそうでしょう」

再試験やってもまた1ケタ取って再再再試験くらいでやっと合格点取るくらいだから担任、もう怒る気力なくなってた。それでも木兎に付き合ってやる担任ほんと尊敬するわ。私絶対教師やりたくない。心の底からそう思う。

「って木兎さんの話はいいんですよどうだって」
「君が話し始めたんだよ」
「俺に興味持ってほしいんですけど」
「25歳くらいになって出直してこい」
「……」

可哀想だとは思ってはいけないのだ
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