くっそねみぃ…ふぁ、と大きく口を開く。あれからヘッドフォンアンプが気に入ってしまい、ギターをくれた父に駄目元でお願いをしてみたらあっさりと買ってもらえた。「だってお前誕生日とか欲しいものなんだ？って聞くと「カレー！」としか言わなかっただろ？無欲というかなんというか…だからバレー以外に集中出来るものが出来て、更に親に甘えようとする飛雄が可愛くてだな」とつらつらと話し始める父。
昔ギターをやっていたらしい父は、俺がギターをやりたいと言った時すごい喜んだ。「昔の自分の様だ」と父が大切にしていたギターを俺にくれたのだ。


「―…」

朝部屋に並べたギターとヘッドフォンアンプとヘッドフォンを思い浮かべて、鼻歌を歌う。今日明日は流石にギターを持っていくわけにはいかない。部活して家帰って飯食ってギターして…その計画を頭に思い浮かべる。

「…でも、睡眠時間減らすのはマズイよな」

睡眠時間を減らすつもりは全くなかった。ただギターを持って鳴らして、気づけば日付を回ってからかなり経っていて。流石に気づけば朝になっていた、なんてことは無かったけど睡眠時間が激減してしまった。よし、授業中寝るか。取り敢えず明日は練習試合あるし、ギター禁止。今日明日はバレー三昧だと心に誓う。一番は日向とのタイミングを合わせる事。そう考えながら朝の体育館へ足を踏み入れる。「影山遅いぞー！」朝からウザいほど元気の良い日向が俺を見て声を上げる。「わるいわるい」俺は欠伸をしながら口を開いた。

「なーんか寝むそうだな影山」
「あー…すんません。ちょっと寝不足です」
「倒れんなよー？」
「大丈夫ッス、授業中寝るんで」
「それは容認できないぞ影山。ちゃんと授業受けろ」
「今日はマジ無理ッス」

バシンッ！頬を叩いて眠気を覚ます。動いてたら眠気さめるだろ、ストレッチをしてボールを床に叩きつける。うし、大丈夫だ。ボールを上げる。よし、昨日と同じ感覚でボールを「あ、ごめん手が滑って王様にボール行っちゃった」とアホ眼鏡の声が聞こえ、数秒後後頭部にボールが当たった。俺の上げようとしたボールと、アホ眼鏡が俺の後頭部に当てたボールが床で跳ねる。

「おいテメェ」
「ごめんごめん、眠気覚ましてあげようと思ってさ」
「わざとじゃねーか！」
「いやだなぁ、僕なりの優しさだよ？」
「ああ？」

おいお前ら朝から…。澤村さんの声に心臓が凍る。やべぇ、コレついこの前にも体験した流れじゃねーか。「か、影山！おおお抑えろ！気持ちは分かるが抑えろ！！」日向が俺の腕を掴む。抑えろ、思い浮かべろ。コレより性格の悪い人間を、俺は知ってるだろ。…やべぇ、イライラが更に増した。「おいお前の顔、今から人殺してきますって顔してんぞ」と日向が後ずさった。殺さねーよ！

「月島！あまり人を煽るような事をするな！」
「…ハーイ」
「影山、もっと沸点を低くしろ」
「……ウッス…」

澤村さんの声が耳を通り抜ける。あーイライラする。そういや明日青城と練習試合、及川さんも確か青城だった筈だ…あー…。なんか、中学の時の事を色々思い出してしまった。今なら分かる。かなり俺はあの人に遊ばれていた、弄りまわされていた。


「…潰す」


殺意は程々にな！そう言う日向を頭に手を置き体重を加えた。日向の叫び声が響いた。






◇◆◇


「ねぇねぇトビオちゃん、サーブ教えてあげよっか？」
「えっ！」
「そうだなぁ、トビオちゃんが俺に絶対服じゅ」
「おいアホ何やってる」

ゴッ！と鈍い音が響いた。岩泉さんの拳が及川さんの後頭部にめり込み、そのまま及川さんは俺の方へ倒れてきた。吃驚した俺は支えきれずに、及川さんと一緒に床に倒れた。

「あ、悪い影山。大丈夫か？」
「岩ちゃん！？一番に心配すべきは俺じゃない！？ていうか超痛いんだけど！？」
「お前が後輩相手に変な事言うからだろ」

恥を知れ。岩泉さんは蔑むような目で及川さんを見ていた。ていうか俺の上から退いてもらって良いですかね及川さん。俺の視線に気づいたらしい及川さんは少し笑う。「ねぇトビオちゃん」及川さんが俺の頭に手を置いた。やんわりと、俺の髪を撫でる。

「及川様って呼んでみて？」
「おいクズ」

ぐぇっ！と及川さんが潰れたカエルのような声を上げて俺の上から退いた。「おい影山、馬鹿の言う事は気にするな」そういう岩泉さんに俺は口を開く。



「おいかわさま」



「…」
「……」
「……」
「…飛雄バ可愛い」
「おいクズ川」
「飛雄の事嫌いだけどバカ
（素直
）なところは可愛いと思う」
「可愛いはやめてください」

何やってんの影山、と国見に声を掛けられた。「おいかわさまって呼んだら、サーブ教えてくれるって言うから」そう言うと国見は凄い変な顔をした。

「俺、先輩の事すごいって思いますけど、そういうところ馬鹿だなぁ、って思います」
「すごい蔑み顔で言うのやめて？国見ちゃん案外そういうの容赦なく言う子だよね」
「すいません、影山と違ったベクトルの素直人間なんで」
「人はそれを毒舌って言うんだよ国見ちゃん」
「あ、国見ちゃんって呼ぶのやめてください気持ち悪いんで」
「き、きもちわるいって…」

じゃ、先輩失礼します。国見が俺の手を引いて歩きだした。「え、国見サー」「お前先輩におちょくられただけだから。絶対教えてくれないやつだから」呆れた国見の声。

「なんであんなにあの先輩に懐いてんの？あの人絶対教える気ないじゃん」
「及川さんすげーもん」
「性格に難ありすぎでしょ」
「そうなのか？」
「いや、そうなのか？じゃなくて」
「国見さ」
「やめろお前やめろ」

むぎゅっと頬を掴まれた。「それで喜ぶのは多分あの先輩だけだから」「お…おう…？」取り敢えず及川さんに言われても、及川様と呼ぶのは止めることになった。


「先輩もあれだけど、影山も大概だよな」
「え？」
「馬鹿すぎて心配になる」
「ば、ばかじゃねーし」
「いやお前馬鹿だから超馬鹿だから」
「ぬぐ…っ」


でも俺、及川さんにサーブ教えてほしいし…サーブ以外も…。なんて言うと国見が溜息を吐いた。「このバレー馬鹿」なんてデコピンをされる。「ぅあ！？」おでこを押さえた。


「どうせ付きまとったところで教えてくれないんだから、その分俺らにボールあげてよ」

きょとんする俺。「入学してからずっとあの及川先輩？にべったりじゃんお前。俺らだってボール打ちたいのに。特にお前のボールを」国見の言葉に俺の熱が高まる。

「同級生でチームメイトだろ」
「あ、あげる！ボール上げる！今からか？今からか！？」
「いや、部活の時で良いんだけど」
「おう！国見に沢山ボールあげてやるよ！」
「金田一にもな、あいつもお前のボール打ちたいって言ってたんだから」
「おう！」


「素直すぎてお前が怖いよ」という国見に首を傾げる。途中金田一と遭遇して、「じゃあ今日は及川さんに付きまとうの禁止な！」なんて約束をさせられた。まぁ、いいか。俺は頷く。そして部活中「あれー？今日はサーブサーブって言わないのトビオちゃん？せーっかく教えてやろっかなー、なんて思ったのになー。残念だなぁー」なんて及川さんに付きまとわれた。国見と金田一がすごい顔してた。



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突然ぶっこむ北一時代の噺
入学してちょっと経ったくらい

ちょっかい出すの大好きな及川さん
仲良しな国見ちゃん(+金田一)
超素直な影山くん

中一の飛雄すごい可愛いですよね無垢ですよね素直ですよねきっと天使ですよねええ天使なのです。中一のかきくはみんな可愛いと思うんだ。天使なんだ。
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