甘いクリィムで窒息死


「ねぇ芽衣子!新しく出来たカフェ行こう!」

小夜ちゃんが楽しそうに言う。そこのケーキがね、凄く美味しいって今評判なんだよ!絶対行きたい!という小夜ちゃんに笑いながら「いいよ」と答えた。月島君からの視線が痛かった。「わーい!ありがと!あ、隣のクラスのみっちーとかも呼んでいい?」という小夜ちゃんに頷く。そのまま小夜ちゃんは隣のクラスまで走り去ってしまった。月島君が、私に近づく。

「千代さんって、ケーキ食べられるの?」
「ケーキって食べ物でしょう?つまりそういう事だよ」
「…無理しなくていいんじゃない?」
「だって小夜ちゃん凄く楽しみにしてるんだもん。行かなきゃ」
「…そう」

つまらなそうに月島君が言った。


◇◆◇


「月島マジ許さない」
「どうしたの?」
「え、何も聞いてないの?」

放課後、むすっとする小夜ちゃんに声を掛けると「月島本当に許さない…」と何やら呪いのようにぶつぶつと言う小夜ちゃんが居た。何も聞いてないの?とは。


「『そのカフェ、俺と千代さんで行くから千代さんの貸し出しはできないよ』」
「ん?」
「だってさ」
「んんん?」
「今度の休み、月島と行くの?」
「いや、まったく聞いてないのだけれど」
「なんだよー。月島の野郎芽衣子独り占めかよ…友達にも貸しやがれっていうんだ…」

まぁ仕方ない、今回は月島に譲ってやるよ。と小夜ちゃんが机に倒れ込みながら言う。なんで勝手に私の予定が組みかえられているのだろうか。…まぁ月島君、食べ物食べられない私を助けてくれたんだろうけど…ね。




「じゃあ今度の休みカフェね」
「なんで!?」
「いいじゃん。僕も行きたかったんだから」

私を助けてくれたんだろうけど…ね。じゃなかったよ!月島君がただ単に行きたかっただけみたいだよ!「僕甘いもの好きなんだよね」知らないよ!

「ショートケーキが美味しいらしいんだ」
「そ、そう…」

文句の1つでも言おうと思ったのだけれど、なんともまぁ…今まで見た事の無いような優しい顔をしていて私は何も言えなかった。ショートケーキにそんな表情…ま、負けた。私ショートケーキに負けた…月島君の友達なのに…。

「もう月島君ショートケーキとお友達になればいいと思うんだ」
「本気で意味わからないんだけど」

ふーんだ!



◇◆◇


「ほんとに月島君とカフェ来ちゃった…」
「何文句あるの?」
「ないですぅー」

案内された席に座る私達。「お決まりでしたらお呼びく」「あ、もう決まってるんでいいですか」速攻だね月島君、流石だよ。私もわかってる、ショートケーキでしょ。私は紅茶でお願いします。紅茶なら飲めるからぎりぎり。

「ショートケーキと紅茶二つ」
「はいかしこまりました」

店員さんを見送り視線を月島君に移す。短期間で2回も月島君とお出掛けだ。一回目は文房具屋さんだけで終わったけど(私が色んな用紙に目移りしちゃったせいで)、今日はなんだか。

「デートっぽいね」
「ケーキ食べに来たんだよ」
「今回は否定するんだね!?」
「メインがケーキだよ」
「ショートケーキと恋人になっちゃえ…!」

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