金平糖瞬く夜空を泳ぐ


「むぐっ」
「ちょっと、喉詰まらせないでよ。なに飲ませていいんだかわからないんだから」

背中を擦られる。そんな事言われたって、いきなりそんな事言う月島君が悪いのだ。


「ねぇ、次の日曜休みなんだけどさ」
「うん?」
「何処か行かない?文房具屋でもいいよ、食糧探し」
「…うん?」
「デート行こうって言ってんの」
「ごほっ」

普通に油断していたので月島君の口から「デート」なんて言葉が出てくるとは思わなかったのだ。ごっくん、口に入れていた紙を飲み込んだ。


「まぁ冗談はさておき」
「つ、月島君が冗談言うとは思っていなかった…」
「僕の冗談は食糧探しの部分だよ」
「!?」
「で、日曜の事だけど」

あれー?流れるようにそこをスルーするの?きょとんとする私を気に留める事なく月島君は一人日曜のデート(仮)の計画を口にする。私まだ行くとは行ってないのに待ち合わせ時間やら行く場所やら。「え?行かないの?」と威圧感たっぷりに言うから結局は行くんだけどね。用事もないし。
「デートなの?」「男女で出掛けるんならデートなんじゃない?」「あー…そっか?」「じゃあただのお出掛でいいよ」どうやら月島君も何も考えていないようだったから、深く考えるのは止めた。




「別に、デートでいいと思うんだけど」




◇◆◇



「で、文房具屋さんには来るんだね」
「僕の欲しい物買うのが一番の目的だから」

この辺では一番大きい文房具屋にやって来た。「良い感じの紙とペンが欲しい」と、とても大雑把な要望を聞き、ずらっとさまざまな種類の用紙が並ぶエリアにやってくる。

「何この多さ」
「紙質色種類色々あるからね」
「いや、一般的なものでいいんだけど」
「コピー用紙?」
「いやそうじゃなくて。便箋とか、そういうのでいいんだよ」
「そうならそうと言ってよ、工作でもするのかと思ったよ」
「小学生じゃないんだから」

そういうのはこっち。先導するように私は移動する。便箋、可愛いのとか綺麗なのとか、あとシンプルなもの全部そろってるし、多分月島君が気に入るもの見つかると思う。ずらっと並ぶ棚を見て「あー…」と月島君は声を漏らした。

「種類あり過ぎ…」
「眺めるとわくわくしてこない?」
「しない」

もう千代さん適当に選んで、と月島君が欲しいと言ったはずなのに丸投げされてしまった。ええ…、仕方ないなぁ。私は棚の便箋を手に取る。綺麗だなぁ…これとか、紙質面白いからどんな食感がするんだろう。「千代さん」ん?私は振り返る。

「スーパー来たわけじゃないんだからね」
「…ぞ、存じております…」
「どんな食感するんだろうとか」
「まじめに探します」

全部お見通しのようだ。あははは、私は乾いた笑いを上げながら再び棚に目を移す。あ。碧い色を見つける。それを手に取ると夜空のレターセットだった。便箋には星座が書かれていて、封筒は半透明、月が描かれていて。

「きれー…月島君月島君!これどう?」
「ふーん、まぁ悪くないんじゃない」

月島君がそれを眺める。うん、これでいいや。ペンもさっき良さげなの見つけたし。レジへ向かおうとする月島君に「ここまだ見てていい?」なんて言うと「食糧ならさっきの場所行って探しなよ」なんて言われた。た、食べる以外にも可愛いレターセットとか欲しいもん…!

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