溶けるチョコレィト


「なにしてるの」

呆れ顔で月島君は私を見下ろす。えへへへ、埃まみれの私は床に座りこみ笑うしかなかった。


「取れると思ったんだよ」
「君、自分の身長自覚した方が良いんじゃない」
「ひゃ、156cmあるもん…」
「チビ」
「月島君が大きいだけだよ」

床に落ちてしまった教材を拾い集める。うー埃が。けほけほと咳をしながらなんとか散らばった教材を箱に詰め込んだ。


「ちょっと立って」
「はい」
「あー…これ一回着替えて制服の埃払った方が良いよ」
「え、良いよ」

ぺしぺしと髪に付いてしまった埃を叩き落とす月島君。私は制服の前を叩き落とす。「月島君、背中も落として!」「はいはい」月島君に背を向けた。ら、思いっ切り叩かれた。


「いったぁ…っ!」
「隙だらけ」
「むぅ」

月島君はいつもいじわるだ。


「で、何してたの?」
「先生に教材取ってきてって頼まれたの。これ」

うんしょ、とダンボールを持ち上げたところで月島君にダンボールを取られてしまった。え、月島君。私の声を無視し月島君はスタスタと教材室を出ようとする。慌てて追いかける。

「つ、月島君!それ軽いから私全然大丈夫だよ。それに」
「それに?」
「それも凄い埃だらけだよ?」
「げっ」

月島君の学ランに白い埃が付いていた。「あー…」と嫌な顔をしながらも、そのまま月島君は歩く。

「月島君、私ちいさいころころ持ってるからあとでコロコロしてあげるね」
「そんなもの持ってるの?粘着美味しい?」
「食べる用じゃないよ!?」



◇◆◇


「芽衣子さ」

小夜ちゃんがにやにやしながら私を見る。「なぁに?」私は小夜ちゃんを見つめる。


「最近月島君とはどうよ?」
「んー?…仲良いよ、多分」
「ふーん、そっかー、へぇー。そうだよねぇ、イケメンだけど性格あんまりよくない月島君がまさか芽衣子の頼まれた仕事やるんだもんねぇ」
「いじわるだけど、優しいよ月島君」
「優しいのは芽衣子にだけだと思うよー?」

ははは!と笑う小夜ちゃん。ねぇ、絶対勘違いしてるでしょう。「ねぇ、私と月島君別に付き合ってるわけじゃないからね」というと「照れんなよーこのぅ」と私の頭を突いてきた。照れてるんじゃなくて事実なんだけどなぁ。

「山口がツッキーに彼女が出来たぁ!って騒いでたし」
「へー、そうなんだ。誰だろう?」
「…そのボケはつっこむべき?」
「私はほんと付き合ってないよ?」
「本当に?」
「うん」

えー、違うのかぁ…つまんないなぁ。なんて小夜ちゃんが言う。人で楽しまないでください。ふーん、じゃあ月島フリーなのかぁ…小夜ちゃんは月島君を見る。


「小夜ちゃんって月島君すきなの?」
「え、まったく?性格悪い奴は好きじゃないよ」
「や、やさしいってば!」
「はいはい、ごちそうさま。でもさ、フリーってばれたら月島また告白の嵐だよ?」
「こ、告白の嵐…?」
「うん、入学早々結構多かったよー?」

へぇ、そうなんだ。月島君やっぱりモテるんだなぁ。そういえば初めて月島君に見つかった時もラブレター差し出されたんだっけ。そっかぁ…。

「月島君にもいつか彼女が出来ちゃうのかぁ…」
「…なんか、もういいや。月島応援しよ」

溜息を吐く小夜ちゃんに私は首を傾げた。

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