「朝はどうだったよーこいつぅ」
「巳くそうぜぇ」
「女子にそんなこと言うもんじゃないぜ?」
「お前女子なのか」
「男だったらつぐみの彼氏やってるわ」
「ほんとお前ムカつくわ」

あはははーと笑いながら何故か俺の頬を突く。地味に痛いからやめろ、と巳の腕を叩き落とす。今教室に葛城が居ないから良いが、見られて勘違いされたらどうする。

「にゃはは、私がちびすけと?ねぇわー」
「ちびすけ言うな。俺もぜってぇお前とはねぇよ」

葛城の親友(自称)じゃなかったらそもそも話さねーわ。巳みたいなタイプの人間黒尾だけで十分だ。俺は頬杖をつき、今朝の事を思い出す。…近かったな…まつ毛なげーし、髪さらさらそうだし…柔らかそうだし…。普通に身体支えるためにドアに手ついたんだけど、あれ所謂壁ドンでは…ドアドン?ドアドンって何だよ。

「おーいちびすけ。黙りこくってどないした?」
「物思いにふけってた」
「つぐみでやらしー妄想すんな」
「し、てねーよ!」
「は?してないの?かわいいつぐみで妄想しないとかちびすけ本当に男子高校生かよ」
「ああ言えばこう言う…!」

やらしい妄想とかしてねーし。ちょっと、手とか…顔とか触りたいな…とは思ったけど…。好きなんだから、それくらい想っても、いいだろ…。
しっかし、にやにやと笑うこいつを途轍もなく殴りたい、が仮にも女子だ、抑えろ。怒りに震える俺を余所に巳は知らん顔で続ける。

「ちびすけ今日部活は」
「あ?今日は無い。なんか明日使うから準備で出入り禁止」
「ふーん。私も今日暇なんだよ」
「ああ、そう」
「つぐみ今日バイトらしいんだよなぁー。私つぐみのバイト先行っちゃおうかなー」
「……」
「ファミレスでバイトしてるらしいんだよねぇ」
「……甘いものくらいなら、奢ってやる…」
「必死なちびすけ可愛いわーマジで。パフェ宜しく」
「お前は可愛くねーよなまったく」

今日財布に金入ってたっけか?なんて思いだしてると用が合ったらしい葛城がクラスに帰って来た。俺は自分の席に戻るかな、なんて立ちあがろうとしたらガシッと巳に腕を掴まれた。「やほーいつぐみおかえり」と呑気に言うが取りあえず俺の腕を離せ。

「つぐみ今日バイト先お邪魔するぜ」
「え、うんわかった」
「夜久も一緒に」
「えええ?うん…?うん?」

ちらり、掴まれた俺の腕を見る葛城。…勘違い、されてない、よな?よりにも寄ってコイツと。なんて思ってると葛城が口を開く。

「夜久君…無理矢理付き合わされてるんだったら断っていいんだよ?ともちゃんつけあがるととことん行っちゃう人だから」
「ああ、それは知ってる」
「おみゃーらの中の私はどーなってんだ」

えっ。という視線を向ける。そりゃあ…

「ねぇ…?」
「なぁ?」

あ、一応俺も行きたくて行くから気にするな。と言うと「そう?ならいいんだけど」と葛城は頷いた。

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