夜久君と友達(?)になりました。つまり、会話する機会がぐんっと増えたという事で。

「おはよう、葛城」
「おはようございます夜久君」

朝、遠目から「あー今日も夜久君いるなー」なんて声を掛けずに視界の片隅に入れていただけなのに、毎日挨拶する仲になりました。友達だから当たり前か。そもそも友達以前に挨拶はするか。いつもは人が空いてから夜久君を発見するんだけど、実は隣の駅から乗ってくるという夜久君は電車に乗ってすぐ私の前へとやってくるのです。満員電車の中。ええ、くっつきはしないですけど近いです。他の人ともこんな距離だったでしょうか。意識すると凄く近くに感じます。自意識過剰禁止です。
私は電車に乗ると即行扉(めったに開かない方)に貼り付きます。人が空いたら座るのですがそれまでは梃子でも動きません。

「…えっと、悪い…」
「いいえいいえ!狭いですもんね」

私の顔の横に夜久君の腕。壁ドンならぬドアドンですね。ドアドンってなんだちくしょうめ。意識せざるを得ないじゃないですかこんちくしょう!いいえ、これは狭いから。人が多くて車内がせまいから。おーけーおーけー、自意識過剰禁止です。

「どの電車乗っても混むよなぁ」
「ですねぇ…3年目にして大分慣れはしましたけどね」

都会慣れしてなくても、流石に3年目。満員電車には慣れました。最初は死ぬかと思いましたけどね!やっと空いた車内で、二人で椅子に座る。当然隣ですよね。

「葛城って朝来るの早いよな」
「これの1、2本後の電車が本当に地獄なんですよ…」
「ああ…部活禁止のテスト期間中に乗ったわ…地獄だよなほんと」
「アレ乗るくらいなら私は早起きして早い電車に乗ります」

もうあれには死んでも乗らない。

「葛城」
「なんでしょう」
「なんで敬語?」
「……えっ」
「同級生の、しかもクラスメイトでなんで敬語」
「……慣れないからです」
「友達だから、敬語禁止な」
「えっ」
「返事」
「はいっ、いや…うん?」

私にとって難易度が高いのですが。いや、意識するな。友達、夜久君と私、ともだーち。いえすいえーす。

「やっくん」
「えっ」
「あ、ちがう普通に噛みました」

やっぱり動揺してしまいます。

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