「飲み物1本買えないつぐみ−」
「失礼な、買えるよ1本くらい。買う必要性が無いだけで」
「いや待て待て、1日缶一本で過ごすのはどうかと思う。必要性大有りだぜ?」
「逆にさ、ともちゃん1000mlの紙パックはどうかと思うんだ。ストロー届くの?」
「傾ければ普通に飲めるぜ?」
「ペットボトルでよくない?」
「1.5Lのペットボトル持ってくるのは流石に骨が折れる」
「いや500mlで…」
「足りぬ」
「運動部なら兎も角、ともちゃん帰宅部でしょ…」

私の事はどうでもよくてだにゃ、つぐみバイトでもすればいいと思うんだ。いつもこっちが見てて可哀想なレベルの金欠人間…。と憐みの目を向けるともちゃん。失礼だなぁ、別にお金がないから飲み物買わないわけじゃないんだけど。

「というか私バイトしてるし」
「…にゃんだと…そんなの私知らねーぜ?」
「言ってなかったっけ?2年の時からファミレスでバイトしてるよ」
「バイトでは割とベテラン…!?」
「1年ちょっとでベテランって言われても」

まぁ確かに、高校生バイトの入れ替わり激しいし、もしかしたら今いる高校生バイトで一番長いの私かもしれない。

「人見知り激しいつぐみが…」
「別に人見知りが激しいってわけじゃないんだけどなぁ。ただちょっと、きらきらしてる人にはあんまり近づきたくないっていうか」
「きらきらってなんぞ」
「雰囲気?」
「つぐみが特に避けてるバレー部員はめっさきらきらしてんの?」
「きらきらもあるけど…バレー部という人種が、少し苦手」
「バレー部という人種、とは」
「宮城で仲良かった人がバレー部だったんだけど、その後輩がいじめっ子でした」
「つぐみいじられっ子だったかぁ」
「い じ め !」
「わかるわかる、つぐみってなーんかいじりたくなるんだなー」

どこぞのどちらさまは、いじりたいんじゃなくて懐かれたいみたいだけどにゃ。なんて私の頭をぐりぐりと撫でた。懐くとは。

「ぬふふー、そう簡単には懐かせてやらねーんだぜ」
「なんの話?」
「気にするな。ところで私つぐみのバイト先行きたい」
「私の家の近くだよ?」
「ぐがっ、遠いヤツや。毎日よぉ遠い家から学校まで来るもんだねぇ。梟谷のが近かろうて」
「確かに梟谷のが近かったかも」
「じゃあなんで?」
「引っ越し決まるのがギリギリすぎて音駒しか試験受けられなかった」
「にゃるほどねー」

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