「つぐみーノート寄越せー」
「ともちゃん、ちょっとは自分で」
「じゃ、2限終了までには返すよん」
「ちょ、他の授業中に写さないでね?」
「しらぬー。じゃあにゃ」

いそいそと私の数学のノートを拉致し、ともちゃんは自分の机につっぷした。ちょっと、今使わないなら返してよ!そんな事を思っていたら夜久君がノートを持って私の前に居た。

「今いいか?」
「う、うーん」
「駄目か?」
「ノートを取られてしまいまして、夜久君のノート見ながらで良いです?」
「ん。よろしくお願いします」

おーい、原沢ぁ席借りるぞー。と原沢君(隣の席の男子)に了解をとり、椅子を近づける。…近くないですか。夜久君は全く気にしていないようなので私が自意識過剰なんですねわかります。この問題なんだけど、と指差された問題。あーちょっとクセのあるもんだいなんですよねー。と使う公式を自分の机から取り出したルーズリーフに書きこむ。

「あーなるほど」
「この数字を今度こっちの公式に当てはめると答えが出ます」
「おおー、授業で教わるより全然解りやすかった。ありがとう葛城」
「いえいえ、お役に立てたのなら幸いです」
「んじゃ、はい。お礼」

と、机に置かれたのはココアでした。「えっ」と私は声をあげます。

「1問しか教えてないのに」
「いーの、間違えて買っちゃっただけだし」
「ええー…でも」
「いいから」

じゃ、ありがとな。原沢君の椅子をちゃんと元に戻し、夜久君は自分の席へと戻って行きました。置かれたココア、公式を書いたルーズリーフ。「あ、ココアだ」いつの間にか起きたともちゃんが前の席に座る。

「つぐみココア好きだよねぇ」
「うん」
「ふへーん」
「どうしたのともちゃん」
「べっつにぃ。あ、ノートあんがとさん」
「いつ写したの…」
「にゃはは、つぐみココア一口くれ」
「やだ」
「えー」
「今日1日このココアだけで過ごす」
「…飲み物代浮いてよかったねぇ…足りなくなったら私がココア奢ってあげよう」
「え、いいよ。のど乾いたら水道水で…うっ、なんとか頑張る」
「東京来た当初水不味っ!ってショック受けてたもんねぇ」
「宮城に帰りたい…」

あっちはあっちでややこしい人たち居るから微妙なんだけどね。元気かなぁ…あの人たち。

<< | >>