今日も私は、
平凡な毎日を享受するのです





朝、東京の通勤通学ラッシュは地獄です。電車はたくさん来ますが、どの電車も満車なのです。恐ろしい都会の電車恐ろしい。母の実家はこちらに比べると田舎で、電車だってこんなに混んでなかった。私は田舎に永住したかった。
揉みくちゃにされながら電車に乗り、学校へ向かいます。大体の人が途中で降り、学校近くになると人はだいぶ減ります。

あ、あのちっちゃ.......こほん。あのドアに寄り掛かってる人は私と同じクラスの夜久君じゃありませんか。喋ったことはあまり無いので挨拶したりはしませんが。
夜久君、あの身長でバレー部なんだそうです。別に身長が低いからどうこう言うつもりは毛頭ございませんが、他の部員さんがなんかあり得ないくらい背が高かったので、うん。頑張ってください夜久君。陰ながら応援させていただきます。

あ、もうすぐ学校です。立ちあがり、ドアの前へと移動します。バッグの中から定期を探していると、隣に影。ただ自然とそちらに視線を向けると

「…ん?」
「おはよう葛城」
「ぅえあっ。おはようございます夜久君」

隣のドアの前に居たはずの夜久君が居ました。なにゆえ。思わず変な声が出てしまいました。「なんだ今の声」と笑う夜久君に顔が熱くなります。恥ずかしい。「今日の3限の課題やった?」「えっと…数学でしたっけ?とりあえずは」「解んないところあったんだけど、教えてくれない?」そんな会話を改札を出るまでしました。…正直、なんでこんな状態になっているのでしょう。あまり話しをしたことないですし、こんな友達のような会話を何故私が夜久君としているのでしょう。

駅前のバス停で、黒尾君と、よく一緒に居る金髪…プリン頭の男の子が居ました。それを見た夜久君は「じゃあ、また教室で!」と2人の方へと駆け出して行きました。正直安心です。私みたいな、そこら辺に居る通行人Cがあの目立つ面々に近づくとか御免被ります。

「にゃっほー、つぐみ」
「あ、ともちゃんおはよー」
「夜久と一緒とか超珍しいね。どったの」
「わかんない…ちょっと世間話?してた」
「ふーん、まぁどうでも良いわな。そんなに関わることもないだろうしねぇ」
「だねー」
「クラスメイトだけどそんなに喋んないもんねぇつぐみ」
「そうだねー」
「なーんか避けてるもんねぇつぐみ」
「……」
「別に夜久に限った事じゃなくて多少目立つ奴には近づかないもんねぇ」
「…ともちゃん」
「私なんか特に目立つ気がするけどねぇ」
「ともちゃんはこっち来て1番最初に友達になったから…」
「つぐみ友達少ないよねぇ」
「うぐっ」

にゃっはっは!悪気は無かったが本音が出てしまったよ!ごめんつぐみ。そう大笑いするともちゃんに肩を落とす。まったく悪びれないともちゃん。どうせ友達いないですよーだ。つーんと顔を背けると「ごめんよー。私とつぐみ超親友、マブタチ、おーけー?」「…おーけーおーけー」「じゃあ3限の数学の課題写させてくれ給え」そういうともちゃんにでこぴんを御見舞してやった。


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友達(親友)
巳知代(ともえともよ)。通称ともちゃん。
つぐみの数少ない友達。同じクラス。
「にゃ」とか「ぜ」が口癖。かなりクセ有。

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