私はこの後用事があるので!と、ともちゃん回収をお断りし(すごい切なそうな顔をされた。ともちゃんどんだけ迷惑かけてるの…)私は職員玄関へ向かう。花!花の苗!箱に詰められたいくつかの花の苗をみてテンションが上がった。「これ、校舎裏の花壇に運ぶの?」そうです!…そう、です?

「うひゃっ」
「俺、あの空間に居たくないから手伝う」
「うえええ?」

ひょい、っと苗の入った箱を持って行ってしまった。私も慌ててついて行く。足の長さが違うんですけど!ててててて、と速足で追いかける。と、金髪プリンさんが突然止まる、当然ぶつかる。

「にゃふっ」
「あ、ごめん」

くるりと後ろを向き「俺、孤爪研磨2年」と言うとまたそそくさと歩きだしてしまった。待って私も自己紹介させて!そんなことは気にせず結局校舎裏花壇まで私は必死になって孤爪君を追いかけていた。

「ふ…ひぇ…」
「…体力無さ過ぎじゃ…」
「こ、孤爪君脚の長さの違いをもっと自覚して…!」
「全体的に葛城小さい」
「平均!…って名前」
「あのうるさいメンバーによく名前出てくるから。それとも、先輩つけた方がいい?」
「そういうのはあんまり気にしないけど」

あの人たち私が居ないところでなにしゃべってるんだ…!私が知らない人に私のこと知られてるって…。
スコップで何も植えていない土を掘り起こす。「俺も」という孤爪君を止める。だって土まみれになるし。私は土いじり好きだから気にしないけど。私の隣に腰を下ろし、花を見つめる。…なんか、穏やか。不良とか思ってごめんね。

「…葛城は」
「うん?」
「夜久さんの友達?」
「…さっきも答えたよ?」
「いや、そういうんじゃなくて…外野がうるさくてわかりやすいから…」

孤爪君が何を言いたいのか、よくわかりません。外野=ともちゃんと黒尾君はわかるんだけど。…うーん…。

「えっと…つまり…その…」
「夜久君と付き合わないの?って話、かな?」
「………えっ」

聞いてきたのは孤爪君なのに、これでもかというくらい目を見開いて私を見た。…いや、うん。確かに外野がうるさくてわかりやすくはあったよ。自覚は無いんだけど。
苗の根を少しほぐし、掘った穴に埋める。土をかけて、ぽんぽんと叩く。

「しってた、の?」
「孤爪君の言う通り、ともちゃんも黒尾君も騒いでたからね。あれで気付かない方がおかしいよ。だって二人とも廊下まで響く声でしゃべってるんだもん」
「……うわ…」
「孤爪君の気持ち、よくわかるよ。うわぁ…って思うもん。実のところ、クラス全員しってるんだよ」
「………ごめん、クロちょっと怒ってくる」
「あはは、いいよ別に」
「…で、付き合わないの?」

関係ない人間が、口にすることじゃないかもしれないけど。孤爪君はそういった。私は小さな花を指先で揺らした。

「そうだね、他人が口出しすることじゃ、ないよね?」
「…っ、ご、ごめ」
「あー!違うの違うの!私ね、あの二人がそう騒ぎ立てて知っているだけだから、夜久君本人の事全然わからないし。だから」
「夜久さんがアクション起こさなきゃ、何もしない?」
「…そうだね。私だって、わかんないもん」

…わかんない、なんて嘘である。例のドアドンとか、ここ最近一緒に登校してなんとなく…さっきだって、なんだかんだで楽しそうに話をしている3人の光景が、羨ましかったり。


「…ふーんだ、私だってもにーとかまちがいるもん」
「?」

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